2020年11月7日

負担増中止署名-「自助」による「公助」切り捨てにストップを

(愛知保険医新聞2020年11月5日号)

 菅内閣が発足し、安倍内閣以来4カ月半ぶりの国会が始まった。コロナ禍で疲弊し、抜本的な支援が必要な医療・社会保障分野の議論も大いに期待したい。首相就任後の会見から、首相の社会保障へのメッセージは極めて乏しいが、首相取り巻きの動きは警戒すべきものがある。10月8日の財政制度等審議会の分科会では、75歳以上の窓口負担割合を「2022年度初めまでに改革実施を」「2割負担の対象者を広く取っていくべき」「制度の根幹で議論を緩めてはいけない」との議論が目立った。
 厚労省も、介護保険の2割負担と同様の所得上位20%の人(年収約240万円から383万円)を2割負担とする考えだと報じられている。この間、医療と介護はどちらかの制度改悪をする際に、両制度のより悪い方の基準に合わせる傾向があるが、介護保険の所得上位20%は、280万円からなので、後期高齢者医療の2割負担を厚労省案のようにすれば、介護保険の2割負担の基準改悪も見え隠れする。
 菅政権の“自助”第1の路線の現れか、前述の財政審分科会では、生活保護受給者を国保に移管させることが示された。国が4分の3を負担している現状から、医療保険の国保に財政をゆだねれば、大幅な国庫負担削減、つまり国保加入者と自治体財政の負担を増やすことになる。それどころか、生活保護という国が責任を持つセーフティネットが崩壊することにもなる。“公助”の放棄である。
 さらに、同分科会では、医療費の伸びの要因として「医師数」「診療報酬改定」「新規医薬品の保険収載」などを挙げ、「抑制」の必要をうたっている。診療報酬については、「マイナス改定でも診療報酬総額は増加するため、診療報酬単価を抑制することが必要」とまで指摘している。
 また、介護保険制度では一般会計からの法定外繰入の余地が生じない規定があるとして「国保法についても同様の規定を導入する」ことも求めている。ただでさえ国保料(税)は、国庫負担が削減されていることを背景に高い保険料になっているが、この方針が適用されると、愛知県内の現状で1人あたり約1万円の法定外繰入がなくなり、その分の保険料高騰が容易に想像できる。
 このような政策の議論が現内閣のもとですでに進行していることを直視し、「みんなでストップ負担増」署名を成功させる必要がある。

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