2020年9月27日

骨太方針2020-医療機関への支援策示さず

(愛知保険医新聞2020年9月25日号)

安倍政権のもとで最後となる「経済財政運営と改革の基本方針」いわゆる「骨太方針」が7月に閣議決定された。
今回の方針では、新たな医療・社会保障改悪を明記することはできなかった。コロナ下で国民批判を浴びることが明らかなためであろう。
しかし一方で「骨太方針2018・骨太方針2019等の内容に沿って、社会保障制度の基盤強化を着実に進め」るとしている。これは骨太方針2018で2019~2021年を基盤強化期間と定め、高齢者医療や介護などの患者・利用者負担増で社会保障費の自然増を圧縮してきた方針を引き継ぐ姿勢だ。
医療機関への経営支援策については「必要な対応を検討」するとし、具体的な施策は示さなかった。二木立氏が「『今そこにある危機』に対する緊張感に欠ける」(日本医事新報8月1日)と指摘しているように、これまで協会・保団連をはじめ日本医師会などが緊急の支援を求めているにも関わらず、政府は来年度予算で対応しようという構えだ。
感染症対策では「保健所の体制強化」に取り組むとしているが、自民党政権自身が保健所を半減させ、職員を大幅削減してきたことへの反省が語られていないようでは、焼け石に水の対応しか期待できない。また、「感染者数の増大に十分対応することができる医療提供体制に向けて万全の準備を進め」るとしているが、これもスピード感がない表現だ。
そのうえ「地域医療構想会議での議論を活性化」することも併記され、病床削減を引き続き推進しようとしている。感染症対策に真摯に取り組もうという姿勢が全く感じられない。
医療のオンライン化については、「診察から薬剤の受取までオンラインで完結する仕組みを構築」するとしている。現在、コロナ下での時限的特例でオンラインでの初診が認められているが、この特例の恒久化を財界が強く要求している。日医などの異論を反映して「検証を進め」るという表現にとどまったが、今後の動きには注視が必要だ。
都市ごとに全ての公共サービスを民間委託し、医療・社会保障費の抑制を図る「スーパーシティ構想」の早期実現が掲げられていることも看過できない。
政府は新型コロナ感染症が顕在化させた問題から何も学んでいないと言わざるを得ない。新首相は国の基本は「自助・共助・公助」だと発言したが、公助の拡充で国民の生活と健康を守る社会こそ望まれている。

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