2019年11月8日

妊産婦医療費助成-安心して生み・育てられる環境の整備を

(愛知保険医新聞2019年11月5日号)

妊産婦医療費助成制度は妊産婦が費用の心配なく医療を受けることができるよう、窓口負担の助成をする制度である。全国的には、岩手県、栃木県、茨城県、富山県の4県で県の制度として実施されているほか、市町村が独自の事業として取り組んでいる例も多くある。一方、愛知県内では東海市で産婦人科受診分を対象に行われているのみという状況である。
同制度については、前回診療報酬改定で問題となった妊婦加算についての検証をするなかで、社会保障制度審議会等でも改めてその重要性が指摘されている。日本産婦人科医会も「妊産婦の負担を軽減しながら、保険診療をより安全・安心なもの」とするために、同制度の創設と妊婦加算の復活を併せて行うよう求めている。同医会常務理事の谷川原真吾氏は、全国保険医新聞のインタビューで、「妊娠中には、(中略)産科的合併症だけでなく、全ての診療科領域の合併症『偶発合併症』を発症し得」るとして、歯科も含めた全科での対応の必要性を指摘しており、全疾患を対象とした助成制度が求められている。
また、2018年12月に衆参両院で全会一致で成立した「成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律」(成育基本法)では、「社会的経済的状況にかかわらず安心して次代の社会を担う子どもを生み、育てることができる環境が整備されるように推進」することを基本理念として掲げている。この基本理念を実現するためにも、同制度に所得制限や窓口一部負担金を設けず、全ての妊産婦を対象に窓口負担無料で実施するべきである。
協会地域医療部では、10月1日付けで同制度の創設と拡充を求めて県内全市町村に要望書を提出した。要望書では、①疾患や受診科目の制限がない妊産婦医療費助成制度を創設すること、②所得制限や窓口一部負担金は導入しないこと、③助成期間は母子保健法6条等で定める妊産婦の定義を踏まえ産後1年までとすること――を求めている。また、制度の必要性は全国共通であることから、「国による妊産婦医療費助成制度創設を求める自治体意見書採択」も求めて県内全市町村議会に陳情を提出している。協会では、今後も同制度の創設・拡充を国・県・市町村に求めていく。

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