2019年3月16日

8年目の3・11-原発ゼロは世界の流れ

(愛知保険医新聞2019年3月15日号)

東日本大震災・福島原発事故から、丸八年が経過した。福島第一原発の廃炉作業は困難を強いられ、最近、溶け落ちた燃料デブリを、はじめてロボットアームでつかんだことがニュースになった。これからようやく、デブリ取り出しの方針が検討される。
震災や原発事故からの避難者の苦悩も続いている。愛知への原発避難者については、県の補助を受けた支援センターが、甲状腺検診や支援を行っており、これには、協会も協力している。
原発は、いまやコストがかさみ、事業として成り立たないことを如実に示したのが、日立の英国での原発建設計画の凍結決定だった。アベノミクスの一つ、原発輸出政策の目玉だったこの計画が、事業費が想定の1.5倍の3兆円に膨らみ、英・日両政府が相当肩入れしたが、最後は「民間企業の経済性合理性から」(日立)断念した。
一方で再生可能エネルギーのコストは下がり続け、政策さえ転換すれば、立派に原発ゼロは達成できる状況にある。九州電力でたびたび起きたような、供給が需要を上回るとして原発ではなくて、再エネ発電をストップするという愚を繰り返してはならない。原発ゼロは世界の流れである。
原発ゼロをはばんでいる最大の問題は、政府の頑迷な姿勢である。政府は昨年7月、エネルギー基本計画を4年ぶりに改定、閣議決定した。それによると、2030年度の電源構成比率で、再正可能エネルギーを「主力電源化」し22~24%とする一方、原発は「ベースロード電源」として温存、依存度を可能な限り低減するとしつつ、20~22%に据え置いた。低減ならぬ、新増設しなければ達成できない数値を、依然として掲げている。
原発に頼らないエネルギーを求める国民世論は、各種調査を見ても、常に過半数を超えている。その声に応えて、野党4党が昨年3月、「原発ゼロ基本法案」を国会に提出した。国会は、他の重要法案の審議が続き、この法案は棚上げになっているが、この動きを前進させるべく、愛知でも11月、立憲野党も参加した「原発をなくす愛知の会」結成のつどいがもたれた。今後の活動に期待したい。
私たちは、国民の命と健康を守る医師として、原発避難者の支援を今後も続けていくとともに、原発ゼロの日本をつくる決意を、ここにあらためて表明する。

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