2019年1月26日

通常国会-“日本を売る”乱暴な国会は改めて

(愛知保険医新聞2019年1月25日号)

書店で平積みのベストセラーに「日本が売られる」(堤未果著、幻冬舎新書)がある。水・海、食の安全から個人情報、国民皆保険など、日本の国土や財産が叩き売りされている実態を渾身の取材力で暴いている。
同書に取り上げられている例の一つ、「水道法」では、民営化で水道料金高騰や設備管理の低下を招く例が欧米で伝えられる中、年末の臨時国会で極めて不十分な審議のまま強行成立した。水利用が欠かせない医療機関にとっても大いに関係がある。
臨時国会では、他にも外国人労働者の受け入れを拡大する「入国管理法」、沿岸漁業への大企業参入を拡大する「漁業法」など、まさに日本が売られる法整備が、数を頼った与党側の乱暴な国会運営で進められた。
12月末には、2019年度予算案が閣議決定された。そこでは防衛費の膨張ぶりに目を覆う。5兆3千億円の予算に加えて、2018年度補正で4千億円、「防衛計画の大綱」と次期「中期防衛力整備計画」で護衛艦を攻撃型空母に改修し、敵基地攻撃能力に優れたステルス戦闘機F35Bの導入などで後年度分も含めて27.5五兆円もの予算化を盛り込んだ。アメリカの言い値での兵器爆買いともいわれる。「中日新聞」社説は「軍拡競争の次に待っているのは戦争」「さらに九条まで手をつければ、戦争への道は近くなる」と警鐘を鳴らしている(1月4日付)。
安倍首相は、今年の年頭記者会見で「具体的な(憲法)改正案を示して、国会で活発な議論を通じ、国民的な議論や理解を深める努力を重ねていくことが選挙で負託を受けた国会議員の責務」と述べるなど、通常国会での改憲発議を狙っている。改憲を食い止めるには、夏の参議院議員選挙で、改憲勢力に発議のために必要な3分の2以上の議席を与えないことが重要となる。この点での野党の共同にも期待したい。
医療・社会保障分野では、官邸や財界主導で進められている経済財政諮問会議・未来投資会議などから、夏には新たな改革工程表が予定されており、高齢者の窓口負担割合引き上げや介護保険の負担増・給付縮小などが具体化される。
消費税をめぐる医療機関の損税問題は、年末に示された「診療報酬での精緻な補填」では解決しないことは明らかである。解決のためには、まずは10月の10%への引き上げを中止することから要望したい。

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