(愛知保険医新聞2018年7月25日号)
2017年7月7日、核兵器禁止条約が国連条約交渉会議で122カ国の賛成で採択されて1年がたつ。条約は50カ国が批准した後、90日後に発効することになっており、7月19日現在59カ国が署名に調印し、11カ国が批准手続きを完了させている。しかし、唯一の被爆国である日本は極めて遺憾なことに条約への不参加を表明している。
条約は核兵器の開発、実験、生産、製造、取得、移転、使用、使用の威嚇など、核兵器に関するあらゆることが禁止されている。核兵器が明確に「悪」であると法的に位置づけられたことは大きな意味を持つ。条約は、将来的に核保有国が条約に加わることを想定し、廃棄・検証などのプロセスを定めており、核保有国にも門戸が開かれている。
朝鮮半島では、南北首脳会談と米朝首脳会談が開かれ、北朝鮮の核兵器放棄が進められようとしている現状を踏まえれば、唯一の戦争被爆国である日本が、核兵器の非人道性を全世界に発信し、核兵器禁止の先頭に立つべきである。
現在保険医協会では、全ての国が条約を批准することを求めて「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が核兵器廃絶を訴える署名」(略称・ヒバクシャ国際署名)に取り組んでいる。署名は、世界で数億を目標に取り組まれている。条約発効が現実のものとなりつつある今、条約に背を向ける政府の対応を変えようする動きも広がっている。
横倉義武日本医師会会長が会長を務める世界医師会理事会では、「医師の使命として、すべての国に対して条約にただちに署名、批准し、条約を実現するよう各国に呼びかける」との決議を採択した。また、「条約の批准を求める」意見書が322の地方議会で可決されており、愛知県では2018年6月に岩倉市議会が県内で初めて意見書を可決した。他にも、県内23自治体の首長がヒバクシャ国際署名に署名し、自治体として署名に取り組む所も出てきた。
赤い背中で有名な谷口稜曄氏や肥田舜太郎氏、土山秀夫氏と核兵器廃絶運動を大きく牽引してきた被爆者らを亡くしたが、2017年12月には被爆者と共に活動してきた核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)がノーベル平和賞を受賞するなど世界の情勢は大きく変化している。条約の早期批准を後押しするため、ぜひともヒバクシャ国際署名にご協力をお願いしたい。