(愛知保険医新聞2018年7月5日号)
朝日新聞紙面から。「平成の約30年間で、一般的な働く世帯の税と社会保険料の負担が月に約3万4千円、率にして36%増えた。この間物価は1割上がったが、消費に回した額は逆に約4千円減少。年金や医療などの負担で、働く世代の暮らしが先細った姿が浮き彫りになった」(大和総研試算、6月3日付)。
消費税が増税し、石油製品など値上がりが続く中で、庶民の消費は沈み、税や社会保険料の負担が重しになっているというわけだ。
6月15日閣議決定の「経済財政運営と改革の基本方針2018」(骨太方針)では、消費税の10%への増税を明記し、「社会保障は歳出改革の重点分野」として筆頭に掲げられた。具体的には「①75歳以上の窓口負担2割化、②外来受診時定額負担、③薬剤自己負担の引き上げ、④金融資産を含めた保険料負担」などについて、2017年骨太方針で「速やかに検討・実施」だった表現が、「検討を進める」という表現になり実施時期は明記しない形となった。
これは政府が患者負担増計画の手を緩めたというよりは、総裁選を控えた安倍政権が延命を図り、憲法改正を成し遂げたいという願望達成のために、来年の統一地方選挙・参院選挙を控えて、目に見える負担増計画は、なりを潜めさせた、と見るべきではないだろうか。
一方、自民党の「人生100年時代戦略本部」は、現在「70歳未満」「70歳~74歳」「75歳以上」に分かれている患者窓口負担を「原則3割」にすることを提言している。
今年の骨太方針では、「経済財政再生計画の改革工程表」で示した社会保障分野44項目の具体化を、2021年度まで継続し、新たな改革工程表を年末までに策定するとしている。75歳以上の窓口負担2割化などのメニューは残っている。国民の批判が弱ければ、高齢者の窓口負担割合も2割どころか3割もあり得る情勢にあるが、国民・医療関係者・患者の目が厳しければ、負担増計画を断念させる条件はあるということでもある。
日本医師会は、「財政悪化のツケを患者負担に求めることは余りにも無責任」と指摘しており、受診時定額負担や地域別診療報酬などにも批判をしている。医療界を挙げた国民的世論喚起が求められており、保団連でも秋から患者署名を計画中であり、会員各位のご協力をお願いしたい。