(愛知保険医新聞2025年5月25日号)
自民党、公明党、日本維新の会は2月25日、OTC類似薬の保険給付のあり方の見直しを含む議論について、3党による協議体を設置することで合意した。この3党合意に先立ち日本維新の会は、国民医療費の総額を年間で最低4兆円削減する改革案を発表。その中でOTC類似薬は1兆円あるとし、同党の猪瀬直樹参議院議員は、国会でムコダイン錠やヒルドイドクリーム、ロキソニン錠などのOTC類似薬のリストを示し、保険給付から除外し医療費を削減するよう迫った。
セルフメディケーションを理由にOTC類似薬を保険給付から除外することは、重篤な疾患を見逃し、治療が遅れることで重症化を招く恐れがある。また、患者の受診控えを招くだけでなく、薬剤によっては薬局での購入費用が医療機関で処方された一部負担金よりも高額になり、かえって国民医療費の高騰を招くことも、保団連による調査で明らかとなっている。
そもそもアトピー性皮膚炎などの治療は、日常的に医師が診察、管理することで症状を安定的に抑制しており、患者が医師の判断なく売薬を塗布することで重症化するケースもある。また、薬剤によっては軽症患者だけでなく、中等度の患者に使用するケースもあり、これらを保険給付から除外することは医療現場を大混乱に陥らせることとなる。
OTC類似薬には、子どもの難治性疾患に対する薬剤も含まれており、これまで子ども医療費助成制度で助けられていた子育て世帯からは、子育て支援に逆行する負担増に不安の声が上がっている。
高額療養費制度の見直し同様、患者の声を無視した拙速な見直し議論が進んでおり、日本医師会も重大な危険を伴うと懸念を表明している。
3党合意を受ける形で、財政制度等審議会は4月23日、現在保険収載されている薬剤の処方にかかる技術料等を保険外併用療養費に位置づけることで、OTC類似薬を全額自己負担できるとする案を示した。この案の導入を許すことは、実質的な混合診療の解禁・拡大であり、到底許されることではない。今後示される春の建議や骨太の方針に、どのように盛り込まれるかが焦点となる。
医師の処方権を侵害し、国民皆保険制度の根幹を揺るがす今回のOTC類似薬の保険外しを断固阻止すべく、今夏の参議院選挙に向けて、国民・医療界を巻き込んで大きな争点に押し上げていく運動が求められている。