2025年6月27日

拙速な移行が現場の負担を深刻に―保険証残せ

(愛知保険医新聞2025年6月25日号)

マイナ保険証の利用率が低迷を続けている。今年4月時点の全国のマイナ保険証利用率は28.65%で依然として3割を下回っている。同じく4月時点での国家公務員が加入する共済組合のマイナ保険証利用率も29.57%である。マイナ保険証の利用を推進する立場にある国家公務員でさえ、利用率が3割を下回っていることの意味は重たい。
協会が実施した「2024年12月2日以降のマイナ保険証利用に関するアンケート」では、昨年12月以降、8割以上の医療機関がマイナ保険証をめぐるトラブルを「経験した」と回答している。政府はトラブルへの対処をしているとしているが、医療機関の現場では、トラブルが減っていないことは明らかだ。また、「窓口業務の負担が増えた」との回答も6割を超えており、ただでさえ人手不足に悩んでいる医療現場に無用な負担を強いている。
今年7月末には、多くの市町村国保や後期高齢者の保険証が有効期限を迎える。健康保険証の新規発行は停止されているため、マイナ保険証を持っていない人には「資格確認書」が送付されるが、マイナ保険証を持っている人は原則としてマイナ保険証で受診することになる。
政府は利用率が低いことなどを理由に来年夏までの暫定的な措置として後期高齢者については全加入者に資格確認書を発行することを決めた。これは、医療や介護の現場からの声に加えて、自治体の実務担当者からも不安の声があがったためである。しかし、利用率が低いことを理由にするのであれば、全世代で利用率は低迷している。
東京の世田谷区・渋谷区は、市町村国保の全加入者に資格確認書を送付することを決めたが、その理由について世田谷区長は「全員に送付するのが合理的」と説明している。協会が愛知県内の市町村担当者に行った聞き取り調査では「東京の取り組みが羨ましいし効率的だと思う」「7月に混乱が起きないか心配」などの声があり、あまりにも拙速なマイナ保険証への移行が、医療だけでなく様々な分野に歪みを生じさせていることが明らかになった。
協会は医療のデジタル化に反対するものではない。しかし、これだけ現場で矛盾が広がっているなかでマイナ保険証への一本化を強要する政府の姿勢には強く抗議する。また、現状の課題を解決する最も効率的な方法は、保険証の復活であることから、「保険証残せ!」の運動をさらに広げていくことが重要だ。

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