2025年3月27日

新たな地域医療構想 地域医療の担い手を増やす抜本的対策を

(愛知保険医新聞2025年3月25日号掲載)

厚労省は、2024年12月18日に「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」(以下、「新たな地域医療構想」)を公表した。
「新たな地域医療構想」では医療提供体制の現状と目指すべき方向性として、「①85歳以上の増加や人口減少がさらに進む2040年とその先を見据え、全ての地域・世代の患者が、適切に医療・介護を受けながら生活し、必要に応じて入院し、日常生活に戻ることができ、同時に、医療従事者も持続可能な働き方を確保できる医療提供体制を構築、②医療機関の役割分担を明確化し、地域完結型の医療・介護提供体制を構築」するとしている。そのために、現行の地域医療構想のような入院医療だけでなく、「外来・在宅医療、介護との連携、人材確保等を含めた医療提供体制全体の将来ビジョン・方向性を定める」ことを掲げている。
しかし、現行の地域医療構想では、病床の機能分化の名のもとで急性期病床の削減・転換によって、医療費の削減を進めてきた。「新たな地域医療構想」では、医療機関機能報告や、構想区域ごとの協議の場などを利用して、医療機関の再編・集約化や外来医療・在宅医療の確保を図っていくとしている。このような手段を駆使して、国は病床削減・転換にとどまらず、外来・在宅医療、介護との連携も含めて医療提供体制全体をコントロールすることで、医療費のさらなる削減を進めることを狙っている。このままでは、地域の入院医療をはじめ、医療提供体制全体を縮小し、集約化や再編統合の方針が進められることになる。
また、「新たな地域医療構想」とともに「医師偏在対策」が検討されてきた。そこでは「重点医師偏在対策支援区域の設定」などとあわせて、「外来医師過多区域における新規開業希望者への地域で必要な医療機能の要請等」のように、規制的・強制的な手法も掲げている。
この規制的手法について財政審では、特定地域で過剰となっている診療科の医療サービスを「特定過剰サービス」と称してアウトカム指標を設定し、その指標を満たせない医療機関に一点単価を引き下げるなどの診療報酬減算の仕組みも検討されてきた。このような仕組みでは、若手医師の開業意欲を削ぎ、地域医療を支えてきた開業医が減少して、医療提供体制全体が弱体化してしまう。
そもそも日本では、医師総数がOECD平均の約3分の2程度であり、医師数が絶対的に足りないために、地方、都市部の双方で医師が不足している。医師の不足の是正には、規制的な手法よりも医師増員に向けた抜本的施策こそ求められている。

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