2024年8月27日

PFAS汚染-国は健康被害を未然に防ぐ早急な対応を

(愛知保険医新聞2024年8月25日号)

全国的にPFAS汚染が大きな問題となっている。PFASは「有機フッ素化合物」の総称で、「PFOS」や「PFOA」が代表的なものである。水や油をはじく性質があり、フライパンのコーティング、衣類の防水、ハンバーガーの包装紙、泡消化剤など使い道が多い。科学的に非常に安定性があり、「永遠の化学物質」とも言われる。自然界では分解されにくく、生きものの体内に蓄積され、人の健康への影響が心配される。
汚染発生源は、製造工場や使用する半導体工場、空港、米軍基地などである。河川や地下水のPFAS濃度が高いところは、大阪府摂津市や岡山県吉備中央町など全国的に存在する。また水道水からも高濃度のPFASが検出されている。愛知県でも、豊山町で汚染が拡がり、反対する住民運動がおきた。協会は住民が環境問題で首長に直接要望を行う「いっせい行動」で豊山町のPFAS汚染を取り上げ、県に調査を要請した。
PFAS汚染の健康影響については、今まで、子どもの出生体重の低下、免疫力低下、コレステロールの上昇、肝機能低下、腎臓癌などのリスク上昇などが指摘されている。国際がん研究機関(IARC)は2023年、PFOAについて「発がん性がある」、PFOSについて「発がん性がある可能性がある」と認定した。
日本では水道水や地下水について、PFOSとPFOA合算して1Lあたり50ng(ナノグラム:1ng=10億分の1g)とする、暫定目標値がある。アメリカは二つの合算で70ngであったが、2024年4月に、それぞれ4ngと厳しくした。
2024年2月、内閣府食品安全委員会は、PFASの許容摂取量を定めた評価書案の意見公募(パブリック・コメント)を行い、協会も意見を提出した。そして六月、委員会は評価書案を概ね了承すると発表した。許容摂取量は欧州の六十倍以上で、人の健康影響について「これ以上の摂取は避けるべきという量を設定するには証拠が不十分」とし、発がん性についても「証拠は限定的」、「不十分」とした。余りに無責任で、被害を未然に防止するという鉄則をないがしろにするもので、到底認められない。
保険医協会は、健康を守る医師・歯科医師として、この問題に取り組んで行く決意である。

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