2025年4月7日

政府予算―社会保障費拡充へ抜本的な転換を

(愛知保険医新聞2025年4月5日号掲載)

3月31日、2025年度予算が成立した。今国会は、昨年の総選挙で与党が過半数割れをするという新しい情勢で迎えた。予算審議でも、戦後初めて参議院で修正された予算案が、衆議院の同意を得て成立する形となった。
政府予算案は、防衛費を過去最大の8.7兆円計上する一方、社会保障関係費は自然増分を1,300億円程度圧縮するもので、政府の案では、このうち200億円程度を高額療養費制度の見直しで賄うとしていた。しかし、高額療養費の見直しについては、全がん連など制度を利用する当事者から「死ねと言われているようだ」などの悲痛な声が次々とあがったことや、保団連の情報発信などによって、国民の反対の声が大きくなり、政府は今年8月からの負担上限額の引き上げを「凍結」した。「凍結」させたこと自体は、運動の、重要な成果である。一方、石破首相は、高額療養費制度の見直しについては今年の秋までに「改めて方針を検討する」としており、見直しそのものの白紙撤回には至っていない。今年夏に行われる参院選以降に、改めて負担増計画が示されるのではないかとの観測もあり、白紙撤回に向けた運動が引き続き求められる。
なお、この間の高額療養費制度を巡る議論のなかで、「医療費が増え続けていることは問題であり、それを抑制することが重要な課題だ」との意見が、与党だけでなく日本維新の会など野党の一部からも出てきている。日本維新の会は、高齢者の外来での高額療養費負担上限額の見直しやOTC類似薬を保険給付から外すことなど、自民党以上に乱暴な患者負担増計画を提案している。
この主張の根本には社会保障費を削減しなくては国家財政が成り立たなくなるとの認識がある。しかし、それは余りにも短絡的な考え方と言わざるを得ない。今回の政府予算を見ても、防衛費は7,000億円以上大幅に増額しており、社会保障費だけ削減の標的にするのは矛盾している。
物価高で国民の生活が逼迫する現在、最優先すべきは、国民の生活を支援することだ。ところが政府予算は防衛費の増額分を社会保障費の削減などで賄う構図となっている。国家財政が無制限にあるものではないというのは当然だが、それをどのように使うかは国民の選択で大きく変えることが可能だ。国民の命・暮らしを最優先にする政治への転換が必要だ。

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