2024年9月17日

長期収載品-国民皆保険制度を壊す選定療養化に反対

(愛知保険医新聞2024年9月15日号)

長期収載品(後発医薬品のある先発医薬品)の選定療養が10月から導入される。これはあらかじめ国が指定した長期収載品を患者の希望により処方・調剤した場合、後発医薬品との差額の一部を患者に追加負担させる仕組みで、対象は1095品目に及ぶ。
医師・歯科医師が医療上の必要性があると判断した場合や、後発医薬品の提供が困難な場合は選定療養の対象外となるが、対象となる場合の選定療養費は、長期収載品と後発医薬品最高価格帯の差額に4分の1をかけた額(プラス消費税)となり、その差が大きいほど患者負担は増えることとなる。厚労省の示した試算では、3割負担の薬価自己負担額で従前の1.4倍、1割負担で2.7倍となる。
子ども医療費助成制度など、公費負担対象患者も選定療養の対象となることで経済的負担による受診抑制に繋がりかねず、またこれまで窓口負担無料で受診してきた患者に新たな自己負担が生じることで、医療現場での混乱も危惧される。
厚労省は創薬力強化や薬剤費の増加を理由に長期収載品の選定療養を導入し、後発医薬品利用促進や保険財政に占める薬剤費の削減を狙っているが、導入されれば後発医薬品の更なる供給不安を引き起こしかねない。また今後、長期収載品の患者負担の範囲がなし崩し的に拡大する恐れがあり、医療保険部会では「長期収載品の保険給付のあり方の見直しを中心として検討を進める」、国も今年の骨太の方針で「薬剤自己負担の見直しについて引き続き検討を進める」としており、いずれは保険給付の範囲から投薬が切り離されることも想定される。これらの動きは2006年、健康保険法等の改正法成立時の「給付割合について、現行の公的医療保険の範囲の堅持に努める」とした付帯決議にも反し、到底容認できるものではない。
日本医師会は「保険外併用療養費と混合診療は全く異なるもの」(メディファクス5月23日)としているが、今後長期収載品以外にも選定療養の動きが拡大すれば、実質的な混合診療の道を開くこととなる。事実、歯科の金属材料の保険給付外しや、高額な費用を要する治療などの選定療養化について、支払い側などから圧力がかかっている。
協会は、すべての国民が必要な医療を平等に受けられる国民皆保険制度を崩壊させる混合診療へとつながりかねない、今回の長期収載品の選定療養化に反対し撤回を求める。

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