2024年2月7日

診療報酬改定 物価高騰・賃上げ等に引き上げ、総枠拡大こそ

(愛知保険医新聞 2024年2月5日号)

2年に一度の診療報酬改定が6月に実施される。今回も薬価等の引き下げ財源が診療報酬本体の財源には充当されず、診療報酬本体改定率は0.88%の引き上げの一方、薬価等で1.00%引き下げられ、全体では0.12%の引き下げと、6回連続のマイナス改定となった。
会員からは「医療資材をはじめ医療機器の保守費までもアップで、医療機関だけが実質マイナスとなることは遺憾」「職員の賃上げのためにも診療報酬の引き上げを。このままでは働く人がいなくなり医療崩壊だ」などの切実な声が上がっている。医療機関は、連続のマイナス改定や新型コロナの影響とともに、物価上昇と賃上げによる人材確保の対応など、厳しい経営を強いられており、今回のマイナス改定は容認できない。
本来診療報酬は、医療機関の経営の原資となるだけでなく、提供する医療の内容や水準、質にも大きくかかわるものである。医療従事者の労働環境の改善や不合理是正などを行い、医療の質を向上させていくためには、医療費の総枠を拡大し診療報酬を引き上げることが必要である。
今次改定の「診療報酬改定の基本方針」や中医協でまとめられた「これまでの議論の整理」では、「雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革の推進」が項目の一番目に挙げられており、賃上げ実施のための新たな点数も設けるとしている。しかし「医療機能の分化・強化」「効率化・適正化を通じた安定性・持続可能性の向上」など、従来からの医療費削減の方向性は変わってはいない。
「外来医療の機能分化・強化等」では、生活習慣病管理料の要件と評価とともに特定疾患療養管理料の対象患者の見直し、リフィル処方や長期処方の活用、医療DXの活用による特定疾患処方管理加算の要件と評価の見直し、「かかりつけ医・かかりつけ歯科医等の機能の評価」では、地域包括診療料や小児かかりつけ診療料の要件と評価、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の施設基準や評価の見直し、「質の高い在宅医療等の確保」では訪問診療の算定回数に着目した在宅時医学総合管理料等、在宅療養支援診療所等における訪問診療料の評価の見直しなど、今後の医療提供のあり方に大きな影響を与える内容が盛り込まれている。さらに10月からの長期収載医薬品と後発医薬品との差額の一部を患者負担とする選定療養の仕組みの導入も加えられており、看過できない。
協会では、今後も医療崩壊を招き矛盾や混乱をもたらす改定には反対するとともに、診療報酬の引き上げを求めて運動を続ける。

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