(愛知保険医新聞2023年5月5・15日合併号)
厚労省は3月に行われた社会保障審議会医療保険部会で、光ディスクなどで請求を行う医療機関に対して、原則、2024年9月末までにオンライン請求に移行することを実質的に義務付ける計画案を示した。愛知県内でも医科で約10%、歯科で70%もの医療機関が光ディスクで請求をしており、多くの医療機関に費用負担と混乱を来すこととなる。
協会は、医療のデジタル化全般について反対するものではない。しかし、今回のように、一方的に期限を区切って強制するようなやり方については、断固反対である。同じように期限を区切って行ったオンライン資格確認義務化の際には、申請期限までの手続きを迫られる医療機関につけ込むように、法外な価格で販売する業者があったことは記憶に新しい。また、すでにシステムを導入している医療機関でも、システムの不具合などの際に業者へ連絡しても、すぐには対応してもらえないという状況もあった。同じ状況が繰り返されることは火を見るよりも明らかである。
協会は4月7日付で首相、厚労・総務・デジタル各大臣に抗議声明を送付するとともに「オンライン請求『義務化』方針の撤回を求める要請書」への署名の協力を呼びかけている。医師・歯科医師であればどなたでも署名いただけるので、広く協力いただきたい。
今回のオンライン請求の実質「義務化」方針や、四月から実施されたオンライン資格確認の義務化が強引に進められようとしている背景には、健康保険証の廃止も含む「医療DX(デジタルトランスフォーメーション)」がある。医療DXでは、レセプト審査のICT化で審査支払機関の人員削減を進めるとともに、審査支払機関にレセプト分析等を通じた「医療費適正化」やビッグデータの構築・管理を担わせることが狙われている。そのために、審査業務上の手間を減らすことができるオンライン請求への移行を医療機関に求めているのだ。これは、医療費抑制を図る医療DXの推進のために、医療機関を踏み台にするものである。
国が推進したい医療DXのために、国民皆保険制度を「人質」にして、医療機関にオンライン請求・資格確認を期限を区切って強制することや、国民にマイナンバーカードの取得を強制することはあまりにも乱暴である。計画案の現段階で方針撤回に向けて、取り組みを強めることが必要だ。