愛知県保険医協会は、診療報酬のオンライン請求「義務化」方針に強く抗議し撤回を求める理事長声明を、4月7日付で内閣総理大臣、総務大臣、厚生労働大臣、デジタル大臣あてに送付しました。
厚労省は3月22日の社会保障審議会医療保険部会に、光ディスクなどで請求する医療機関に対して、2024年4月以降は新規適用を終了し、原則2024年9月末までにオンライン請求に移行することを実質上義務付ける計画案(ロードマップ案)を示した。また、紙レセプトによる請求医療機関に対しても、2024年4月以降の新規適用を終了するとともに、既存の紙レセプト請求医療機関には改めて届出を求めるとしている。そしてこれを実施するため、2023年度中に請求省令を改正し、期限を区切って実施を迫るものとなっている。
この計画案は、昨年6月に閣議決定された規制改革実施計画に盛り込まれていた「将来的にオンライン請求の割合を100%に近づけていく」、「2022年度末までにロードマップの作成を措置する」との内容を具体化したものであるが、医療機関におけるオンライン資格確認整備の義務化等を理由に、突如1年半後の期限を設けてオンライン請求の「義務化」を医療機関に押し付けるものであり、オンライン資格確認の義務化に対応した医療機関にとってもさらなる費用負担と混乱をもたらすことになる。医療機関の経営を窮地に追い込み、医療提供の継続を困難にするこのような政策には強く抗議する。
社会保障審議会医療保険部会に示された資料では、現在光ディスク等で請求する全国の医療機関は、医科で約2割にあたる18,000超の医療機関、歯科では6割を超える40,000超医療機関となっており、とりわけ愛知県においては、歯科医療機関で7割を超えている。厚労省のアンケートでは、オンライン請求への移行に要する期間が「1年以上」「わからない」と回答した数は6割にのぼり、オンライン請求の開始は「予定はない」が47%と約半数が回答しており、多くの医療機関が影響を受けることになる。
紙レセプト請求を行う医療機関については、オンライン請求の開始は「予定はない」が8割を超えているが、紙レセプトは「経過的な取り扱いであることを法令上明確化」した上で、改めて届出を求めることは、余計な負担を課すものであり、高齢医師・歯科医師にとっては閉院・廃院に追い込まれることになりかねない。
今回のオンライン請求の「義務化」計画案は、データヘルス改革はじめ「医療DX」の工程管理からも明らかなように、医療等ビッグデータ(全国医療情報プラットホーム)を構築し、患者の健康・医療情報を国が管理し「医療費適正化」や民間活用を行うため、レセプト分析等を進めることを目的に、有無を言わさずオンライン請求に移行させることが狙いであり、極めて威圧的で乱暴なやり方と言わざるをえない。
医療機関の実情を無視し、オンライン請求を強制するようなことは到底容認しえない。我々医師・歯科医師は、このオンライン請求を実質上義務付ける提案を即時撤回するよう求める。