医科診療報酬改定情報(8)

 1月26日と28日に開催された中医協に、改定点数が入っていない個別改定項目(いわゆる短冊)が提示された。中医協公聴会の開催とパブコメの締切からわずか1週間後の提案であり、その後の中医協ではパブコメや公聴会での意見は十分議論されておらず、反映もされていない。短冊は747頁と改定は多岐にわたり、診療報酬はさらに複雑化している。

賃上げを実施した場合の点数が設けられる
 個別改定項目から主な内容を紹介すると、初・再診料等は日常的な感染防止対策や職員の賃上げの観点から引き上げられる。また、賃上げに対する新たな評価として、看護職員等の医療関係職種の賃金の改善を実施している場合に算定する「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」(1日につき)が新設される。令和6年度・7年度の対象職員の賃金改善の実施、賃金改善の計画の作成、賃金改善状況の定期的な報告などの施設基準が設けられ、厚生局への届出が必要となっている。また賃金改善の強化が必要な医療機関が算定する「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)」、入院料算定患者に算定する「入院ベースアップ評価料(Ⅰ)」も新設される。(Ⅱ)については対象職員の給与総額の割合を計算し、要件を満たすかどうかの管理が必要となるなど、医療機関に負担がかかる内容である。
 医療DXの推進としてはオン資確認の体制整備に係る医療情報・システム基盤整備体制加算が「医療情報取得加算」に名称変更となり点数も見直される。またオン資による情報の取得・活用とともに電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスの発行体制などの施設基準を満たした場合に算定する「医療DX推進体制整備加算」「在宅医療DX情報活用加算」が新設される。

影響が危惧される生活習慣病に係る医学管理料、
特定疾患処方管理加算の見直し

 今回、外来診療への影響が危惧される内容として、生活習慣病に係る医学管理料の見直しがされる。現在特定疾患療養管理料の対象となっている糖尿病、脂質異常症、高血圧が除外される。生活習慣病管理料については、要件等が見直しされ、従来の管理料は「生活習慣病管理料(Ⅰ)」となり、検査・注射・病理診断を包括しない「生活習慣病管理料(Ⅱ)」が新設される。したがって、従来は糖尿病等で特定疾患療養管理料を算定していた患者については、生活習慣病(Ⅱ)で算定することとなる。
 生活習慣病管理料の算定要件では、(Ⅰ)(Ⅱ)とも外来管理加算の併算定はできなくなる。また生活習慣病管理料の算定患者が病状悪化等の場合に翌月に生活習慣病管理料を算定しないことができる取り扱いが廃止され、(Ⅱ)を算定した月から起算して6カ月以内は(Ⅰ)の算定はできず、(Ⅰ)を算定した月から起算して一定期間は(Ⅱ)は算定できないとされている。また、少なくとも1月に1回以上の総合的な治療管理の要件は廃止され、患者の状態に応じて28日以上の長期の投薬やリフィル処方箋の対応が可能な旨を院内掲示することが算定要件と施設基準に加わる。
 糖尿病等が特定疾患の対象から除外されるため、処方料・処方箋料の特定疾患処方管理加算の算定もできなくなる。さらに、主病の特定疾患に対し28日未満の処方を行った場合に算定する特定疾患処方管理加算1(18点)は廃止される。また、特定疾患処方管理加算2(66点)は点数が下げられ、リフィル処方による期間も含むとされるなど、医師の診療回数を減らし、長期処方・リフィル処方を強力に推し進める内容となっている。

かかりつけ医機能の要件強化、と在宅医療点数は
さらに細分化し複雑に

 かかりつけ医機能の評価では、地域包括診療料の要件の追加、地域包括診療加算等の点数の見直し、要件の追加と小児かかりつけ診療料の要件と点数の見直しなどが行われる。また、初診料の外来感染対策向上加算の要件の見直しとともに、適切な感染防止対策を講じて発熱患者等を診療した場合の加算点数が新設される。
 在宅医療では、患者の状態に応じた緊急往診の見直し、在医総管・施設総管の単一建物診療患者10人以上の点数区分が、10~19人、20人~49人、50人以上の区分にさらに細分化され、点数も引き下げられるとともに、直近の一定期間の訪問診療の回数が多い場合は点数が減算される。また支援診・支援病の訪問診療料が、一定期間の訪問診療の回数が多い場合の点数が減算となる。
 その他、一般名処方加算や外来後発医薬品使用体制加算の要件追加と点数の見直し、疾患別リハビリテーションは職種ごとの点数区分に細分化、病態に応じた早期リハの見直し、通院・在宅精神療法の点数の見直しや「早期診療体制加算」の新設なども盛り込まれている。また、入院料のデータ提出加算の対象拡大、一般病棟の重症度、医療・看護必要度の評価の見直しと該当患者割合の見直し、地域包括ケア病棟入院料や回復期リハビリテーション病棟入院料の評価と要件の見直しなど、入院点数にかかわる改定も多岐にわたっている。今後は2月中旬に中医協の答申があり、具体的な点数が入った告示案が示される。

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