医科診療報酬改定情報(3)

 来年の診療報酬改定の具体的な内容が中医協で議論されている。10月20日の総会では、(1)個別事項(その3)として「医療・介護・障害福祉サービスの連携」、(2)在宅(その3)として「訪問看護」、(3)「選定療養に導入すべき事例等に関する提案・意見募集の結果について」が議題として報告・提案された。
(1)の連携については、かかりつけ医機能に関わる報酬評価(地域包括診療料・加算、機能強化加算)において、サービス担当者会議参加、ケアマネへの相談対応の位置付けについて議論。多様な対応を評価すべきとする診療側と要件化を求める支払側で意見が対立した。また医療機関と介護保険施設の連携強化では、情報共有や急変時対応への評価、介護保険施設における高額薬剤の出来高算定などを求める診療側と、施設基準などで対応すべきとする支払側で意見が分かれた。
(2)の訪問看護では、強化型訪看ステーションにおける特定行為研修修了者の配置の義務化、増加傾向が著しい精神科訪問看護の重症度に応じた評価などが議論となった。
(3)の選定療養については、意見募集の結果が報告された。「新たな選定療養の追加に係る提案・意見」では「リハビリの対象外となった患者へのリハビリ」や「在宅医療における医療材料の支給」、歯科の「ジルコニア」などの他、「オンライン資格確認導入済医療機関でマイナカードを使用しない場合の料金」の意見も出されている。今後事務局で検討の上、中医協に導入等の可否が諮られることとなるが、保険医療の在り方にも影響するため、検討状況には注視が必要である。

処遇改善で応酬 診療側の報酬引き上げ必須との主張に、支払側は否定

 10月27日の中医協総会では、入院の看護職員処遇改善評価料の実績報告と入院・外来医療等の調査・評価分科会からの報告について議論された。医療関係職種の処遇改善をめぐっては、診療側から、医療・介護分野の賃上げが他の産業を下回り人材流出が起きるのは「地域医療存続の危機だ」とし、診療報酬の確実な引き上げは必須との訴えがあった。これに対し支払側は、医療機関が相対的に低賃金の職種に還元するなどして賃上げを実現すべきと主張し、「診療報酬上の評価を安易に増やすべきではない」と反論した。
 11月8日には、急性期入院医療について、三次救急から回復期リハ病棟などへの「下り搬送」、7対1病棟における「重症度、医療・看護必要度」のB項目の取り扱いなどが論点として議論された。

支払側の外来管理加算廃止要求に、診療側は「暴論」と反発

 11月10日の中医協では、外来(その3)として、かかりつけ医機能の評価などについて議論がされた。厚労省から論点の一つとして、地域包括診療加算や特定疾患療養管理料、外来管理加算、生活習慣病管理料等の併算定について意見が求められた。
 支払側は、外来管理加算は対象疾患や診療科の条件がなく、基準が極めて曖昧。評価の妥当性に疑問があるとして、外来管理加算の廃止と併算定の整理を主張した。これに対し診療側は「暴論だ」と強く反発。「外来管理加算は基本診療料として評価されるもの。詳細な診察や丁寧な説明を全否定するもので絶対容認できない」と反論した。また併算定の整理についても「丁寧に議論して今の点数体系になっている。全く理解できない」と述べた。
 別の論点として、かかりつけ医機能を持つ医師には文書により患者に対して適切な説明を行うことが努力義務とされていることを踏まえ、文書交付(電磁的なものも含む)による患者への適切な説明を推進するための方策や、主治医と介護支援専門員双方向のコミュニケーションを促すことについても議論がされた。「書面交付の要件化、サービス担当者会議への参加の要件化を求める」支払い側に対し、診療側からは「サービス担当者会議参加の要件化はメールや電話などでも対応可能の場合も多く、多忙な医師にとって非現実的な運用である。書面を用いた説明の要件化も、全ての患者に必要ではない」と発言した。
 その他、ICT等を活用した時間外対応加算の評価、特定疾患療養管理料の療養計画書の作成や、効果的・効率的な疾病管理と重症化予防の評価なども議論された。また、物価高騰に伴う入院時食事療養費の引き上げについては異論が出されなかった。

特許切れの薬剤の患者負担増の方針―社保審

 診療報酬改定の「基本方針」策定に向けた検討が進む社会保障審議会医療保険部会では、11月9日の会合で、特許の切れた先発医薬品と安価な後発品との差額の一部を、保険適用から外して患者負担とする提案があった。9月の部会では、薬剤自己負担の見直し案として、(1)薬剤定額一部負担、(2)薬剤の種類に応じた自己負担の設定、(3)市販薬類似薬医薬品の保険給付の見直し、(4)長期収載品の自己負担のあり方について出されていたが、(4)について選定療養費制度として差額分を徴収する方針で、大筋合意がされている。しかし、この患者負担増の内容は薬剤の保険給付の縮小であり、今後の保険診療に影響を与えることが考えられ、容認できるものではない。

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