日本の医師の抜本的増員を―保団連勤務医交流会に参加して

愛知保険医新聞2023年8月25日号掲載

勤務医の会副代表 平井 長年

2023年6月4日に保団連勤務医交流会が開かれた。現地東京と地方をWEBでつなぎ北海道から宮崎まで14協会、医師・歯科医師28人が、愛知からは7人が参加した。

午前中は厚労省、医師会の委員も務める日本赤十字社医療センターの産婦人科部長の木戸道子氏から病院での働き方改革の取り組みが講演された。現在、医師総数20数人、年間分娩数1,800件、2009年に労基署の指導を受け二交替制勤務を導入。シフト夜勤は三人体制で、子育て中の医師も60代のシニア医師も担い不平等感を解消し、若手女性医師も夜勤で修羅場を切り抜けキャリアアップを計っている。また助産師、事務とタスクシェア、病診連携し妊婦健診はクリニックで施行等が報告された。

長時間労働を規制するため、働き方改革が2019年4月から実施され時間外労働の上限は月45時間、年360時間とされた。しかし日本の医師数はOECD平均より13万人少なく地域医療が維持できなくなる恐れがあり、A水準は年960時間、特例としてB水準・救急医療、地域医療を担っている病院は年1,860時間とされ、準備期間として5年間猶予された。そして2024年4月から実施される。しかし医師の過重労働は改善されるのであろうか。

午後からは各協会の活動報告があり、中でも宿日直許可が問題になった。これは、医師が夜間や休日に病院で待機する、いわゆる日当直の時間を勤務時間に含めなくて良いとする労働基準監督署の許可だ。これは軽度の短時間業務で充分な睡眠がとれるものに限るとされている。しかし、夜間の診療が常態化している医療機関で一時間に5人、10人診療している病院、年間5,000件も救急車を受け入れる病院もこの許可を得た。厚労省によれば2022年の許可数は駆け込みで前年の6倍1,369件に急増している。本来は時間外労働を把握し、それを規制するにはどれだけの医師の増員が必要かをはじき出さないといけないが、これが働き方改革を骨抜きにする危険をはらんでいる。

国は低診療報酬政策により、働き方改革を進めた病院に対しても金銭的な保障はせず、コロナ禍で日本の医療の脆弱性が明らかになったが、医師数は足りている、問題は地域・診療科の偏在だと言い、抜本的に医師の増員の計画はない。ここに切り込まないといけないのではないだろうか。

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