愛知保険医新聞2025年5月25日号掲載
岡崎市 山本 翼
私は2023年5月に地元の岡崎市で「うみねこ歯科・口腔外科」を開院しました。口腔外科に憧れて勤務医を続けるつもりで口腔外科の門戸をたたきました。口腔外科は面白くて本当に大好きでしたが、我が家にとっては子どもが成長するにつれて医局人事で転勤があることがネックとなり、開業を考えるようになりました。保険医協会の開業準備セミナーを受講したり開業ノウハウ本を読み漁ったりして、開業のイメージを模索しつつ悩みに悩んだ挙句、医局でお世話になった大先輩の先生方が次々と医局を去り開業されていったことも後押しとなり、開業を決意しました。
通法にならい、まず医院の理念を考えることから始めましたが、ずっと病院勤務であったが故に、開業医として、一院長としての自分の姿が想像できずに諸々悩みました。結果、丁寧に納得できる説明をするという勤務医時代の診療スタンスを崩すことなく、自分が後悔することのない診療を提供しようと決めました。
建物に関しては自分が好きになれる医院設計をすることが大事と考え、理想を実現しつつも他院と似たような設計にならないように、敢えて医療系に特化していない設計事務所を選びました。歯科専門の設計事務所にお願いすればこんな苦労はなかっただろうに…と思うことも多々ありましたが、希望をしっかり聞いてくれる良い建築士さんと巡り会えて、結果的に理想を概ね実現できて良かったと思っています。
私が開業するときは、ウッドショックやコロナ禍の影響で、モノの需要と供給のバランスがとれていない時期でした。それゆえに建築スケジュールやコスト面への影響を心配したことや、診療器材や電子機器の調達も困難であったことなども、今となっては懐かしい思い出です。逆に、コロナ禍の中での開業準備であったため現在必要とされている感染対策が十分にできたことは良かったのかもしれませんが、その分開業費用も嵩みました。これから開業される方々は、物価の高騰で私が開業した頃よりも、また一層の開業資金が必要だと聞いております。開業することが本当に自身や家族の幸せにつながるのか、熟考して事業計画をよく見返していただければ、と思います。