(愛知保険医新聞2020年11月15日号)
愛知県保険医協会は創立70周年を9,166人会員で迎えることができた。皆様とともに心からお祝いしたい。協会の目的は保険医の生活と権利を守るとともに、国民医療の充実を図ることである。この2つを掲げて運動し着実に成長してきた。
本来なら6月に記念式典の予定だったが、節目の年に新型コロナウイルス感染症(以後コロナ)危機となり、11月に延期された。その間の未経験な出来事を手探りで進んできた。この災いを乗り越えた先の社会を少しでも望ましいものにしていくために、我々の目標とする医療・介護・社会保障の充実、平和と民主主義、それに立ちはだかる今の政治をとらえ直す必要がある。
コロナを恐れての大幅な受診抑制による経営危機は協会が行った3回のアンケートで明らかであり、その都度、国や自治体に要望しマスコミにも対応してきた。
少しくらいのカゼ症状でも我慢して出勤したりせず自宅でゆっくりするのが本来の医療の在り方ではないのか。我々がコロナ後に目指す社会像はどのようなものか。カゼ症状があれば当たり前に会社や学校を休んでも一定収入は補償され、安心して養生できる。時間的空間的にゆとりのある生活。家庭や職場など閉ざされた場での抑圧がない。政策決定過程のデータを残し、包み隠さず公開し、のちの検証に耐えられる記録。兵器爆買いや敵基地攻撃能力でなく、ウイルスとの戦いの最前線に立つ看護師や介護士、保育士や教員などエッセンシャルワーカーに手厚くする。差別意識を諫めるリーダーなどである。
しかし現状は非正規雇用の解雇が3万人を超え、女性の自殺者が昨年より45%増(8月比)と痛ましい。菅首相の日本学術会議新会員任命拒否の強権政治や、デジタル庁新設目的はマイナンバーカード普及やスマホデータ情報収集による監視社会構築であることを見抜く必要がある。安倍政治継承の高齢者窓口負担増、自然増圧縮などをコロナ危機に乗じて一気に進めるショックドクトリンを打ち破らなければならない。
愛知協会の1949年創立以来の原動力は、先達一人ひとりの医療への真摯な想いと努力の積み重ね、それを支えた事務局の頑張りに負う。協会は医科歯科会員・役員と事務局の三位一体で歴史を切り開いてきた。このコロナ危機を後の世代が振り返ったときに、たいへんな困難を克服してきた一時期であったと様々な教訓を引き出せるようにしよう。