2020年4月17日

マイナンバーカード-オンライン資格確認、対応は任意

(愛知保険医新聞2020年4月15日号)

政府は2021年3月からマイナンバーカードを健康保険証としても利用できるようにし、医療機関の窓口でのオンライン資格確認をスタートさせようとしている。しかし、現在の保険証がなくなるわけではなく、2021年5月からは保険証でもオンラインでの資格確認ができるようになる。厚労省は、オンライン資格確認の導入は義務ではなく、導入するかどうかは医療機関の任意と説明している。
オンライン資格確認をする際は、オンライン請求の設備、回線を利用する。ほとんどの病院はオンライン請求をしているが、医科診療所では65%、歯科診療所では17%にとどまっており、新たなインフラ整備が必要だ。さらに、受付で患者が利用する資格確認機器(顔認証機能付きカードリーダー等)、職員が利用する資格確認端末などのシステムを構築する必要がある。厚労省は医療情報化支援基金による導入費用の補助を用意し11月から申請を開始する予定だが、維持管理やセキュリティ確保などにも新たな負担が生じる。
マイナンバーカードを保険証として使うためには、初回登録の手続きが必要だ。患者が事前に自分のパソコンや市町村役場で初回登録するのが原則だが、初回登録をしていない患者が受診した場合は、医療機関の資格確認端末で初回登録ができるとされており、職員の手間暇が増える。初回登録が済んだ患者が来院した際、患者自らがマイナンバーカードを受付のカードリーダーに置いてICチップや顔写真を読み取らせる操作を行う。受付の職員はマイナンバーカードを預かってはならないとされているが、操作に不慣れな高齢者や障害者には手助けをせざるを得ない。また、マイナンバーカードで受診する患者と保険証で受診する患者が混在し受付がとても煩雑になる。保険証で資格確認を行う場合は、職員が被保険者番号等を資格確認端末に入力して確認することになる。医療機関にマイナンバーカードが持ち込まれれば、紛失や番号漏洩などのリスクが生じる。
オンライン資格確認のためにマイナンバーカードを利用するのではなく、普及が進まないマイナンバーカードを普及させるためにオンライン資格確認が利用されるというのが実態だ。トラブルや事務負担の増大が懸念されるマイナンバーカードによるオンライン資格確認には慎重に対応したい。マイナンバーカードの申請・所持は任意だ。患者には従来通り保険証の確認で診療ができることを伝えるなどの工夫を行い、医療機関にマイナンバーを持ち込ませないことが大切だ。

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