(愛知保険医新聞2019年2月15日号)
本年10月、いよいよ消費税が10%に引き上げられようとしている。4月の統一地方選、7月の参院選を控えて、再々々延期もあるのではないかとの観測もある。しかし税収の基幹を、景気に左右されず安定して見込める消費税でと考える財務省は、増税延期を全力で阻止してくるだろう。売価の一割という税金は大変に大きい。いまだデフレマインドから脱出できずにいる日本国民にとって、購買意欲を著しく減退させることは想像に難くない。
そもそも、消費税は導入時も増税時にも、少子高齢化で膨らむ医療及び介護の社会保障給付の経費に充てるという目的税とされてきた。確かに膨らみ続ける社会保障費に、何とかしなければいけないと感じている国民も多い。しかし、2014年に5%から8%への増税後、税収は5兆円増えたにもかかわらず、社会保障費は5000億円、つまり増えた税収の一割分だけしか増額されなかった。
また、消費税で社会保障費の増加分を賄おうという考えに、従業員を多数抱える大企業は賛成する。本来、保険方式で運営されている社会保障費は保険料の範囲内で賄うのが筋である。給付する費用が足りなくなれば、徴収する保険料を上げざるを得ない。しかし、企業では従業員の社会保険料の半額を企業が負担しているため、保険料が上がると負担額が増えてしまう。だから大企業は消費税の増税に賛成するのである。
租税は本来、各人の能力に応じて平等に負担されるべきという応能負担の原則がある。これは憲法13条、14条、25条、29条から導かれる負担公平原則である。例えば、所得課税では、高所得者に高い負担、低所得者には低い負担を課す。しかし、消費税はどうであろう。消費税は所得の多寡に関わらず一律で課されてしまう。それは、生きていく上で最低限必要な物にも一律である。明らかに応能負担の原則から外れ、憲法の負担公平原則の精神をも蹂躙している。
消費税増税は、予算と税の査定権限を使い他の省庁より優位な地位を占める財務省が、その権限の源である財源を確実に集めたいという財務省の省益のためのものでしかない。また、財務省は日本の借金は1000兆円もあり、増税しないと日本が破綻するという。しかし、何度消費税を増税しても借金返済に回されたことは一度もなく、借金は増え続けるのみである。
財務省の言葉に踊らされてはならない。消費税10%増税中止の運動を進めよう。