2018年9月16日

患者負担増-高齢者に負担増は無理

(愛知保険医新聞2018年9月15日号)

「一億総活躍社会」をうたう安倍首相は、自民党総裁三選をめざす中で、2019年から三年かけて社会保障制度改革を行うと述べている。日経新聞インタビュー(9月4日付)では、まず年金受給開始年齢を70歳以降に先延ばしするなどの高齢者継続雇用年齢引き上げを行い、その後社会保障の給付や負担の改革を実施すると述べている。税・社会保険料負担層を高齢者で創出し、年齢で区別した高齢者の負担軽減策はなくしてゆく……。これは、6月に閣議決定した「骨太方針2018」で、全世代型社会保障構築や自助・共助・公助の範囲見直しとして表れてもいる。その文脈で、「後期高齢者の窓口負担の在り方について検討(75歳以上の窓口負担二割化)」や「医療・介護における『現役並み所得』の判断基準を現役との均衡の観点から見直し(高齢者の高額療養費の負担限度額引き上げ)」と記述されている。このほかにも、受診時定額負担導入なども俎上にのぼっている。
しかし、高齢者に新たな負担増を担わせる余地はないというべきだ。
一例を挙げれば、(1)高齢夫婦無職世帯では、生活費などが毎月約5.5万円不足し、貯金を取り崩して生活せざるを得ない(総務省「平成29年家計調査報告」)、(2)「貯金なし」の高齢者世帯は15%(「平成28年国民生活基礎調査」)、(3)愛知県後期高齢者医療被保険者では、「低所得」区分が3分の1余りを占めている――などである。
さらに、国立社会保障・人口問題研究所の「生活と支え合いに関する調査」(8月)では、5年前と比べた収入の変化を年齢階級別に見ると「減った」割合が最も高いのは60代以上の高齢者である。また、「過去一年間、必要な受診・治療をしなかった個人の割合」では、病気・けがの際に受診・治療をしなかった人は回答者全体の7%存在し、その理由は「仕事など多忙で時間がなかったから」(65%)に次いで「お金が払えなかったから」が20%もある。
7月の社会保障審議会医療保険部会では、「高齢者の生活実態を見ると、負担増には違和感を持つ。介護離職する人が多い状況で、慎重な対応が必要」(全国老人クラブ連合会代表)などの発言も出されている。これ以上の負担増はごめんだという声を高める必要がある。
保団連は、「みんなでストップ! 患者負担増」署名と「クイズで考える私たちの医療」の取り組みを開始した。多くの会員からの協力をお願いしたい。

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