(愛知保険医新聞2018年11月5日号)
明治150年記念式典(10月23日、憲政記念館)で、安倍首相は近代化・工業化などの“光”を強調した一方で、150年の半分の期間を貫いた軍国主義や植民地支配の歩みに対する反省は語られなかった。
第四次安倍内閣の柴山文科大臣は、明治憲法下で発布された「教育勅語には普遍性がある」「(勅語を活用した教育を)検討に値する」と発言するなど、戦後の現行憲法下で無効とされ排除された教育勅語を持ち上げる言動をしている。柴山氏に限らず、閣僚や自民党役員は、安倍氏の盟友であり改憲右翼団体の日本会議国会議員懇談会や神道政治連盟などに加盟歴のある面々が居並ぶ。
このような動きは、安倍首相がめざす改憲と無縁ではない。首相は、10月24日の臨時国会所信表明で憲法審査会に自民党の改正案を提示する考えを示し、「国会議員の責任を果たそう」と述べた。14日の自衛隊観閲式訓示でも自衛隊員の誇りを守るために九条改憲が必要と訓示している。これには、伊吹元衆院議長から「新憲法制定を綱領で言っている党に属し与党で3分の2をもっているのに何をしているんだ、という焦燥感がある。首相が国会に対して言うのはいいのか。内閣には(憲法の)決定権や提出権はない。国会議員に委ねられている」(25日、毎日新聞)と指摘される始末となっている。憲法の定める三権分立を侵して立法府に干渉するという異常さであり、国会提出など言語道断である。
自民党の改憲案は、自衛隊の明記▽緊急事態条項の創設▽参院選の合区解消▽教育の充実――というものだが、核心は九条に自衛隊の存在を明記することにある。しかし、これは日本国憲法の柱である平和主義を骨抜きにし、海外での無制限の武力行使に道を開くことになる。
しかし、どの世論調査でも安倍首相の九条改憲に「反対」が「賛成」を大きく上回る状況にある。朝日新聞の調査(10月16・17日)では、「安倍政権に一番力を入れてほしい政策」として、一番は「社会保障」の30%で、次いで「景気・雇用」「地方活性化」が17%で並ぶが、「憲法改正」はわずか5%でしかない。
安倍政権は、臨時国会での改憲案提出や、来年通常国会での改憲発議は断念し、所信表明で医療や社会保障についてほとんど語らずに「全世代型社会保障」とだけ言うような姿勢を改め、国民多数の声に従うべきである。