2018年10月26日

消費税損税問題-「ゼロ税率」の声を大きく

(愛知保険医新聞2018年10月25日号)

厚生労働省は、7月25日に開催された中医協「医療機関等の消費税負担に関する分科会」において、消費税率8%への引き上げに伴う控除対象外消費税の補填状況に関して、これまで公表していた調査結果に誤りがあったことを報告した。
過去に消費税が導入されたとき、また3%から5%へと増税された際には、診療報酬の個別項目への補填対応であったが、それ以降の診療報酬改定で消費税対応分の点数が不透明になっていき、上乗せ分の見える化ができなくなってしまった。その反省から8%への引き上げ時の2014年改定では基本診療料(初・再診料、入院基本料など)に上乗せする形で増税分の補填が図られた。
2015年11月に公表された2014年改定時の医療機関等全体の補填率は100%を超えていたが、今回の再調査で14年度が90.6%、16年度が92.5%で補填不足があったことが報告された。ただし、一般診療所の補填率は再調査でも14年度、16年度ともに100%を超えていた。このように医療機関の種類によって補填率に大きなバラツキが見られる傾向は一貫している。確かに一見、基本診療料での補填は公平に補填できるように見える。しかし、考えてみれば1日に診られる患者数は、診療科や医療機関の規模によって変わってくる。単位時間あたりの患者数に限界のある大病院や歯科はどうしても不利益が生じてしまう。診療報酬による公平で正確な補填は限界であることは明白だ。
しかし、厚生労働省は「医療に係る消費税等の税制のあり方については、医療保険制度における手当てのあり方の検討等とあわせて、(中略)個別の医療機関等の補填の過不足について、新たな措置を講ずる」とする税制改正要望を発表した。この要望は三師会と四病院団体協議会が8月29日に公表した「控除対象外消費税問題解消のための新たな税制上の仕組みについての提言」を踏まえた記述となっており、診療報酬での対応を除外していない。
診療報酬での補填を維持するということは、非課税といいながら患者や保険者に消費税分を負担させる仕組みが残ることになる。また、消費税の負担額を計算することは煩雑で、小規模の診療所では対応が難しくなってしまう懸念がある。
抜本解決は医療界共通の目標である。医療界の統一した意見としてまとめた三師会・四病協の新たな提言の意義は大きい。しかし、真の意味での控除対象外消費税の抜本解決への方法は、「ゼロ税率」しかないと考えている。年末の税制改正大綱策定に向けて、「ゼロ税率」適用の声を大きく拡げよう。

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