2018年9月7日

歯科診療報酬-基本診療料への施設基準は撤回を

(愛知保険医新聞2018年9月5日号)

今回の診療報酬改定は、施設基準の新設や変更が多く、わかりづらかったのではないだろうか。とりわけ院内感染防止対策として新設された「初診料の注1」の施設基準は、歯科医療機関に大きな負担を強いている。それなのに厚労省は、研修の内容や基準を通達等で明示していない。注1の届出のため研修受講歴として修了証のコピー添付を求められが、そこまでやって10月1日から初・再診料がたった3点の増点で、届出しないと8点減算される。これほど歯科医を馬鹿にした改定もないだろう。
そもそも初・再診料などの基本診療料は、基本的な診療行為を一括して評価するものである。基本診療料は、保険医療機関の経営基盤を支える診療報酬の重要な柱だ。院内感染防止対策などの医療安全は、歯科医療の前提であると厚労省は考えているわけだから、すべての医療機関で院内感染防止対策ができるよう手段を講じるのが厚労省の役目であろう。患者に安心・安全な医療を提供するには、その分コストがかかることは明々白々である。厚労省が本来するべき役割は、国民の安心・安全の医療のためにその費用を明示し、財務省に要求し、予算を勝ち取ることだ。すでに10年前の中医協に出されたデータで見ても、その費用は今回の増点分3点の約10倍になる。それなのに長年低く抑え込まれてきた歯科の初・再診料を、基本の基を忘れ施設基準で差別化するとは、言語道断だ。この禍根を残すと、医科など他の職域にまで波及する恐れがある。そうなっては、歯科の恥だ。
厚労省の施設動態調査による2018年4月末の歯科診療所の数は、68,742で、前年同月比で170施設の減少である。その内訳は、開設者別歯科診療所の個人は661減、医療法人は494増となっている。この調査から見えるのは、施設基準をクリアーできるかできないかで、歯科診療所の行く末が全く違ってくるという事だ。厚労省は、国民患者から様々な役割や機能が求められているとして、複数の歯科診療所のグループ化など規模の確保を検討課題にしている。あなたの診療所の近未来はどうであろうか。
降りかかった火の粉は小さなうちに振り払い、火種を残さないことが肝心だ。国会行動に生かすためにも現場からの声を、保険医協会に寄せてほしい。その声を国会議員に届け、政治を変える力にしたい。

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