歯科医師が知っておきたい医科系疾患のポイント
大切な病理聴取―投薬内容と臨床検査について―(上)
歯科部員 三浦 正典
協会歯科部会は、2019年10月19日(土)に「歯科医療と隣接医学研究会」を開催した。今回は、愛知学院大学歯学部顎顔面外科学講座准教授の宮地斉氏を講師に、「歯科医師が知っておきたい医科系疾患のポイント 大切な病理聴取―投薬内容と臨床検査について―」のテーマで行われた。講演の概要を歯科部員の三浦正典氏がまとめたので、2回に分けて掲載する。
1.正確で確実な問診の重要性、必要性について
患者は、歯科治療時に全身の情報が必要だとは思っていないことが多いので、あまり自分の病気のことを話さない。全身状態を知っていて処置(抜歯)をするのと、何も聞かずに処置をするのでは違う。
お薬手帳を所持していればそれで判断するが、注射薬は記載されていない場合が多いので要注意である。内服薬で注意するのは、ステロイド・BP製剤・血液抗凝固剤・低用量ピルなど。
医科への対診の際には、医科主治医はこれからおこなう歯科治療の侵襲度を把握していないので、具体的な状況を記載する(抜歯の部位、抜歯の難易度、自院にモニターなどがあるのか、止血の方法など)。
再診の患者への既往・併存症の確認を忘れずに、浸潤麻酔する前にもう一度確認(病態、内服状態)する。
最終的な判断・責任は、施術する歯科医にある。
2.臨床検査データについて
現在の歯科医師国家試験では、基本的な臨床検査の基準値を理解している前提で出題されている。CBC(complete blood count)とは何か、ということは把握しておくことが必要となる。
3.肝炎について
特にC型肝炎の治療法について、著しい進歩がある。SVR(ウィルス学的持続陰性化)の状態で治癒している場合が多い。ただし、感染リスクがゼロになっているのではない。
B型肝炎では、de novo (肝炎の再発)という状態があるので、留意する。完治している患者だと安心してはいけない。
4.高齢者歯科における全身管理
全身状態の把握は、高齢者に限らず重要である。高齢者歯科患者の約4分の1が、注意の必要な全身疾患の既往を2つ以上有している。
(つづく)