愛知保険医新聞2024年6月25日号掲載
あま市 加藤 大貴
近年、医歯薬連携の重要性が認知され、全身と口腔の関わりについて基礎および臨床の両面で活発に研究がなされています。周術期口腔機能管理が術後合併症を減少させることや血糖コントロールに歯周病治療が有効であることなどが示されてきました。そして今年は、これまで以上に医歯薬連携を見据えた診療報酬改定も行われたのではないでしょうか。
例えば、周術期口腔機能管理の対象として集中治療室で治療をされている患者が追加されました。また、糖尿病の患者に歯周病の診断と治療のため、歯科受診の推奨を行うことが医科での生活習慣病管理料の算定要件として明記されました。これまでの歯科医療は口腔疾患の治療と予防が中心でした。しかし今日、口腔疾患を全身疾患の一症状として捉え、口腔機能の向上を目指し全身状態の改善にも寄与するステージに入ったと言えます。
私が働くあま市民病院歯科口腔外科でも、求められる役割が変化してきていると感じています。埋伏智歯、口腔癌、顎骨嚢胞・腫瘍といった口腔外科疾患の外科治療だけではなく、皮膚疾患、消化器疾患、血液疾患など多岐にわたる疾患で口腔内に症状をきたすことがあり、疼痛や出血のコントロールを求められています。逆に、口腔症状から全身疾患を疑い医科に患者を紹介したりする口腔内科的な役割も重要であり、求められています。病院からは周術期、リハビリ・回復期の口腔機能の改善と向上、行政や地域社会からは障がい児・者の全身麻酔下の歯科治療や口腔癌検診、災害時の歯科診療の後方支援の推進を求められるようになってきています。
今まで以上に病院歯科口腔外科は口腔機能の維持、向上を図る必要があると思われますが、重要なことは退院後に速やかにかかりつけ歯科医に口腔機能管理を引き継ぎ、患者さんの生活圏で歯科医療の提供が中断することなく継続されることであると思われます。そのためにも顔の見える連携を築くよう努力していきたいです。