(保険医新聞2024年6月5日号)
政治の転換で、命と生活を守り社会保障を充実させる運動方針が承認された。岸田政権は、過去最大の防衛予算とする一方で、医療・社会保障を切り詰めている。急激な円安による物価高騰、減り続ける実質賃金で国民生活を圧迫している。保険医協会は医療機関経営と国民医療を守るために以下の取り組みを行う。
健康保険証存続の署名を続ける
期限を区切って保険証を無くすことはマイナンバーカードの実質「義務化」である。マイナ保険証は障害者や認知症の人は管理・更新できない。最も医療を必要とする社会的弱者を切り捨て、医療を受ける権利を奪うものである。頻発する窓口トラブルの解決の目処も立っていない。我々の運動が国民・患者さんの圧倒的支持を得ていることは利用率低迷に示されている。河野デジタル大臣の「通報」文書は焦りの表れである。
診療報酬の大幅引き上げを求める
6回連続のマイナス改定で医療機関経営に余裕がない。今回の改定は、全体でマイナス改定の上に、少ない財源を「医療DX」に回して医療の質の維持に背を向けている。物価高騰や他業種並みの賃上げには全く不十分である。特定疾患療養管理料から糖尿病、高血圧、脂質異常症を外したことは、内科系診療所に深刻な影響を与える。ベースアップ評価料は、詳細な計画書・報告書、税理士への余分な支払いが必要である。定額減税の事務負担が上乗せされるので、心労は増収分に比べて割に合わない。さらに受付事務担当者が対象外であること、明細書記載で患者さんの誤解を招くことが心配される。その他、オンライン請求原則義務化反対、医薬品安定供給に向けた対策要望、医師の働き方改革に関して、労働環境改善・負担軽減の財政措置、医師養成数増加などの実現を求める。
平和と民主主義を守る
2024年度予算の防衛費は7兆9,000億円で、昨年より1.1兆円も増えている。社会保障は高齢化による自然増を1,400億円削っている。岸田政権が進める安保三文書、敵基地攻撃能力保有、戦闘機輸出解禁、米軍と自衛隊の指揮・統制の枠組み強化などは、周辺国への軍事的緊張を高め、際限のない軍事拡大への道を突き進むだけである。ロシアのウクライナ侵略や、イスラエルのガザへのジェノサイドから学ぶべきは、戦争準備でなく、戦争を未然に防ぐ外交である。東南アジア諸国連合の友好協力条約や、粘り強い対話の努力である。過去の日本の侵略戦争と植民地支配を反省した上に築かれた平和憲法を守る。核廃絶のため核兵器禁止条約参加を政府に働きかけていくなどの方針が承認された。