岸田政権は、昨年末に改定した安保3文書のもと、敵基地攻撃能力の保有のために過去最大の防衛費を計上し、防衛費予算捻出のために増税と医療・社会保障費を切り捨てる方針を鮮明にしている。「全世代型社会保障」の名のもとに、4割もの後期高齢者を対象に保険料を引き上げる計画だ。昨年10月の窓口負担2割化に続く負担増は、年金の実質的な引き下げなどもあり、受診抑制を加速させる可能性が高い。国民の健康悪化が一層懸念される状況である。
昨年、突如、健康保険証廃止方針が示された。保険証が廃止されれば、実質マイナンバーカードの取得強制となる。2025年には介護保険の被保険者証もマイナンバーカードと一体化する方針も示されており、政府が国民を管理・統制するシステム作りが一気に進んでいる。さらに、取得したデータを民間で利活用することまで狙われている。
厚労省は3月22日の社会保障審議会医療保険部会に、原則2024年9月末までにオンライン請求に移行することを実質的に義務付ける計画案(ロードマップ案)を示した。期限を区切ってオンライン請求の実質的な「義務化」を医療機関に押し付けるもので、新型コロナ対応で大変な医療関係者にさらなる負担と混乱をもたらすことになり、地域医療にも大きな打撃となる。
我々医師・歯科医師は、国民のいのちと健康を守り、医療・社会保障の充実、地域医療体制の確立、平和で不安なく暮らせる社会を築くため、次の各項目の実現を求める。
記
一、新たな医療・介護の負担増計画は撤回し、窓口負担を大幅に軽減すること。
一、オンライン資格確認システム・オンライン請求の導入義務化、健康保険証の廃止方針を撤回すること。
一、物価高騰に対して給付金などの対策を早急に講じるとともに、抜本的な対策として診療報酬の大幅な引き上げを緊急に行うこと。
一、新型コロナの検査や診療に対する公費負担の縮小・廃止は撤回し、診療報酬で適正に評価すること。新興・再興感染症の流行に備え、医療提供体制を抜本的に拡充するとともに、保健所機能の充実など公衆衛生体制の確保に努めること。
一、保険でより良い歯科医療を実現すること。基本診療料を引き上げ、医科歯科格差を解消すること。
一、消費税は5%に減税すること。医療にはゼロ税率を適用し、控除対象外消費税負担を解消すること。
一、温暖化対策に逆行する化石燃料依存などをやめ、再生可能エネルギーを拡大し、原発は新増設・再稼働・運転延長をやめ、ゼロにすること。
一、平和憲法を守ること。防衛費の大幅な増額はやめ、平和憲法を生かした外交を行うこと。沖縄・普天間基地を即時撤去し、辺野古への新基地建設は中止すること。日米地位協定は抜本的に見直すこと。政府は核兵器禁止条約に署名・批准すること。
以上、決議する。
2023年5月28日 愛知県保険医協会2023年度第1回評議員会