今年は十干十二支で言うところの癸卯(みずのとう)で、その意味は「変化が生まれる状態、新たな生命がきざし始める状態」だいう。この言葉通り、この運動に15年間携わった者として、歯科医療のあり方を変える絶好の機会を迎えた年と感じている。
それは3年にも及ぶコロナ禍の中で、感染症予防において口が清潔であることの重要性が明らかになってきたこと、また健康で長生きするために、成人に蔓延する歯周病という局所慢性炎症を抑え、患者と医療者の共同作業でこれをコントロールすることが大切であること、さらに口の機能の維持向上が全身の健康に大きく関わることが、実践を通し明らかになったからである。さらに医科歯科連携を推進することで、慢性疾患における病態管理や全身麻酔での手術の前に口腔内を改善することで、患者さんの病状を和らげることにも繋がっている。
40年前の卒業時、歯医者は「歯大工」と揶揄されていたが、やっと全国民を包含する総合的な医療保障の実現である国民皆保険制度で、医科と同じスタートラインに立てたと感じる。この期に至って、厚労省が振りかざす歯科医療経営は「保険と自費のトータルバランス」だ。その歴史的残滓に固執して歯科の混合診療を黙認することは、歯科医自らが制限医療を招いていると言わざるを得ない。その1つがメタルフリーの治療に1歩近づくジルコニア冠の保険導入への態度である。
金パラ高騰を受けて、日歯でもその保険導入が検討されたが、その結論は「会員のコンセンサス」が課題であるという。これに同意するのであれば歯科医自らが「歯科医療は国民皆保険にそぐわない」と言っているに等しい。国民が皆保険において安くない保険料を毎月払っていることを考慮すれば、私たち歯科医師自身が国民の声を受け止め、国民が求めるメタルフリーの歯科治療を本気で前進させる立場にたつことを自覚すべきではないか。
今回の署名は、15年間の教訓からその効果を最大限に発揮するため、改定前年の通常国会に提出できるよう1月から始めている。6月中旬まで開催される通常国会に提出し、診療報酬改定の議論が始まるまでに要求の声を挙げることが大切だ。取組み期間は短いので集中して取り組むことが肝要である。署名を通して国民の声を国会に届けよう。行動こそが情勢を切り開く力だ。
2023年1月27日