2022年7月28日

参院選挙の後に-民意に従い、社会保障・暮らし優先の政治を

(愛知保険医新聞2022年7月25日号)

参院選後の世論調査をみると、有権者の選挙に寄せた思いが浮かび上がる。共同通信の調査(7月11・12日実施)では、参院選で重視した項目は「物価高・経済政策」が42%で最多であり、次いで年金・医療・介護12%、子育て・少子化対策10%。与党をはじめ維新・国民などの改憲勢力がめざす「憲法改正」は5%余りにとどまった。改憲を「急ぐ必要はない」が58%で、「急ぐべきだ」37%より多数だった。「読売」調査(7月13日付)では、政府に最優先で取り組んでほしい課題を10項目示し複数回答してもらったところ、「景気や雇用」(91%)が最多で、「憲法改正」(37%)は最低だった。このように、物価高や賃金低迷など経済・暮らしを守る課題こそが政府に求められている最優先課題といえよう。
異常な物価高騰は、長期にわたる金融緩和で財政悪化を招いたアベノミクスによる円安が大きな要因といえる。物価高対策は関係業界への補助金や地方への交付金が中心だが、日本経済を支える個人消費を温めるには、野党が選挙で唱えた消費税減税は有効なはずだ。医療機関も、コロナ禍で受診抑制が依然として見られる中、物価高が容赦なく押し寄せ、医療材料や機器の費用負担が重くのしかかっている。それなのに、政府のコロナ対策は、新型コロナ感染症の核酸検出の点数が7月から引き下げられたように、財政支援は乏しい限りである。今春の診療報酬改定もマイナス改定で、地域医療を支える医療機関の経営基盤は一層厳しさを増している。加えて、第七波到来と言われる新型コロナウイルスの感染急拡大に、政府は有効な対策ができていない。このままでは再び、医療逼迫の事態を招きかねない。
社会保障分野では、政府は6月に閣議決定した「新しい資本主義」や「骨太の方針」の具体策を進めていく考えだが、その中心は75歳以上の医療費窓口負担を10月から2割化することであり、介護保険でも来年の法改正を視野に、ケアプランの有料化や要介護度1・2の介護保険給付外しを検討など、軒並みの負担増計画である。
岸田首相は、「できる限り早く改憲発議に至る取り組みを進めていく」と述べ、5年後には防衛費の倍増を実現しようと意気込み、自・公・維新・国民各党なども追随するが、「民意を読み間違えてはならない」(中日新聞社説、7月11日付「暮らしの安定最優先に」)のではないか。

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