2006年7月5日

憲法9条は今もかがやく

あいち医師・歯科医師九条の会よびかけ人 /
愛知県保険医協会副理事長  中川 武夫

   いろいろ紆余曲折はあったが、日本は、戦後60年間、国権の発動としての戦争を1度もしておらず、1人の外国人も殺していないし、1人の日本人も死なせていない。この憲法の下で育った私にとって、それは当然のこととして受け入れられている。その中で、子供心に不思議に思ったのは、「戦力は保持しない」と明記されているのに「自衛隊」がなぜ存在するのか、「すべて国民は、法の下に平等であって、…経済的又は社会的関係において、差別されない」と明記されているのに、「貧乏人は麦を食え」と総理大臣がなぜ発言するのか、という点であった。いわゆる、解釈改憲である。
 小学校で習ったユネスコ宣言前文の「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」の一説は、今も明確に記憶している。親から聞かされた戦争中の大変な暮らしだけでなく、第2次世界大戦の犠牲は、被爆者や空襲による一般国民も、兵士として犠牲になったものも含め、今尚、日本のみならずアジア諸国にも大きな影を落としていることを直視すれば、「人類は、戦争も暴力もない世界を目指すべきである」ことに異論のある人はいないのではないでしょうか。その一歩が、まさに日本国憲法9条の第1項と第2項なのではないでしょうか。
 数年前に訪れたコスタリカは「軍隊のない国」として知られている。日本に倣って、憲法12条で「恒久的機関としての軍隊の保有は禁止する」と規定している。そのコスタリカでは、アメリカのイラク侵攻を支持した大統領の行為が、憲法違反にあたるとの最高裁判所の判決が出されている。日本の解釈改憲とは違い、誰もが常識的に納得できる判断であると思うのは私だけではないと考える。この、常識的な判断をされることを恐れ、改憲を積極的に進めようとしている勢力の真の狙いは、あれこれの理屈を言い立てても、結局は9条を改め軍隊を保持し、国際貢献の名の下に海外派兵に憲法上のお墨付きを得ることであると考えざるを得ない。
 私たちにとって今大切なことは、日本国民に何をもたらすために憲法を変えようというのか、現行憲法が目指したものが60年で、どこまで達成できたのかを冷静に検証することではないでしょうか。そして、憲法を私たちの日常の生活に生かしていくことが求められていると、私は考えている。
 日本国憲法9条は、古く時代に合わないのではなく、現代もなお光り輝く私たちの最高の宝であり、平和を願う世界の多くの人々に支持されている。制定後60周年のこの年、私たちの宝である憲法9条を守るためにも、「九条の会」への賛同を呼びかけたい。

ページ
トップ