2013年9月19日

今こそ憲法九条を

一宮市・勤務医 平井 長年
小学生の頃我が家には錆びかけた日本刀が三本あり、亡くなった父が手入れしていた。時折手伝った。酒を飲むと海外へ三カ国行った事があると話した。父は戦地へ赴いた事があった。少年誌には戦火を交える軍艦と戦闘機の絵や軍歌が載っており、懐かしげに歌うのを聞いた。しかし具体的に語ることは無かった。戦争の影響を色濃く残していた昭和三十年代に育った。その後、ベトナム反戦運動、沖縄の祖国復帰運動があり平和への思いを強くしていった。
今憲法九条が危ない。自民党は解釈改憲で集団的自衛権の発動を目論みつつ、九六条改定を突破口に九条を変えようとしている。九条を改定し国防軍を創設する事を隠して姑息的に九六条を改定し、簡単に憲法改定を発議できるように画策したが国民の反対、憲法改定論者からも反対、身内の自民党からも正々堂々とどこをどう変えるかをセットで出すべきだと意見が出され、安倍晋三首相は今国民投票をしても否決されるとして国民の力で消極的な状態に追い込んだ。九六条は単に手続き条項ではなく、過半数で発議になれば憲法が憲法でなくなる。つまり権力者を縛るという憲法の意義が失われる。時の権力者の意向で改定発議が頻回に行われて引っくり返されてしまいかねない。
世界へ戦争放棄を公約した戦後の日本の出発点が問われている。「国策を誤り、植民地支配と侵略」を行った事を反省しお詫びした村山談話と、「慰安婦に関して軍の関与や強制」を認め謝罪した河野談話を、見直しそのまま踏襲しないとした安倍内閣は、先の戦争を侵略戦争と認めず、慰安婦の連行に軍の強制はなかったと主張し韓国、中国だけでなくアメリカからも反論を受け、これ以上外交問題にはしないと開き直った。それを代弁する形で橋下、高市発言が出てきた。
維新の会共同代表の橋下徹氏の発言「慰安婦は必要であった」は人権感覚の無さを露呈し、女性の人権を否定するだけでなく人間の尊厳をないがしろにするものだ。人を殺し殺される人権なき戦場での戦闘が、戦時暴力である日本の慰安婦制度を生んだのであればその根源の戦争こそ廃止し、憲法九条が示す国際紛争解決のために武力の威嚇、武力の行使は放棄するしかない。
自民党政調会長の高市早苗氏の発言「先の戦争は日本の自存自衛のための戦争で、村山談話の侵略という言葉はしっくりこない」A級戦犯を祀った靖国神社そのものの考え方ではないか。
このような今こそ憲法九条を輝かせたい。

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