2013年10月6日

9条 その実現性

東海市 大橋 郁夫
 9条の「理想」とする不戦については前文と併せて今更言うことはありません。
 理想論でなく現実化する技術論の時代の筈です。
 戦争は人殺しですからマサカ好きでする人はありません。何か獲得する必要があって始めるわけで、その必要は土地だったり資源とか労力とか。経済社会的圧迫に抗し自由をといった例もありますが、食えないという言葉に単純化出来るかも。正義などというのは勝った方が後から付けられるのでアテになりません。多少のムリは宗教や民族観などを洗脳に利用して通します。
 現在、戦争が起きるとして一番考え得るシナリオは北からミサイルが飛んで来る事。それを途中で撃破するのは自衛の範囲ですが、もし米本土へ飛ぶ途中を打ち落としてしまったら集団的自衛権の発動になってヤヤコしい事になります。中国にさえ見放されかけた彼が求めるモノは四囲の圧迫からの解放か。暴発したら責任は圧迫した側の筈です。なにか1940年頃のABCD包囲陣に似て、可哀想な気がしないでもありません。圧迫される側の政体が気に入らない等という論理なら大きなお世話で、政体や主義はヒトの生活には大した関係はありません。先軍政治の費用が民生に廻る邪魔をしていた事になります。庶民の文化が花開いた江戸時代は確か軍政でした。
 武力の脅威を武力で抑止しようとすれば、どこかの国のミサイル基地を探知反撃できる能力を見せ付ける必要があります。EUが働いた今の世界で自衛隊は有数の戦力ですが。
 英国ポーツマスに帆機両用時代の戦艦ウォーリア号が係留保存されています。当時の最先端技術で英仏海峡の「抑止力」、たぶん実戦参加の機会無く過した記念艦は幸福でした。
 余談ですが、武力発揮も相手がまだ国家を成さない地方勢力の程度では戦争でなく警察行動と見る例か、昔の満州を馬さん張さんを相手に掃除していた15年戦争の初期を事変と唱えた理由ですが、数世紀前にアジアを分け取りにした欧州諸国がこれを侵略だとはヨク言うよという感じ。掃除の終った辺境を黙って受け取った中華思想も大した役者。ロシアに渡らなかったのはアメリカの先読みだったか。マア過ぎた事ですが。
 刀槍白兵の時代から進んで、銃砲火兵の時代は武蔵大和の46サンチが空振りに終わり、航空時代は戦略爆撃で銃後が死語になり、今や誘導弾というロボット兵器同士が戦う時代です。
 昔、花も蕾の若桜年代だった我々はアア紅の血に燃えて大真面目で戦争をやっていました。一日一人二合三勺の配給米以外を食べている事を家族にさえも秘密にする時代でしたが、今やそんな苦労はポンと一発で消える。戦禍を語り継ぐ運動を貶す心算はありませんが何とも頼りない感じです。
 スイス・エクアドルなど不戦を唱えている国はありますが、残念ながらアジアの東をカムチャッカから台湾までピッタリ囲んだ日本列島は地政学的に見て東西の巨大国家から垂涎の地で、現にアメリカが中国への防壁に利用しています。
 周囲の国と利害調整を進め共存共栄を図る以外に不戦の実践は有り得ません。決して防衛省の仕事ではなく外務省や経産省の仕事。それも丸投げでなく、情報を民間にも流して投資なり観光なり積極的行動を誘発するのが政府の仕事の筈。もうミンシュシュギが尻を叩く出番かも――が結論のようです。
 昔の、東亜永遠の平和とか八紘一宇と言う文句が案外本当に聞こえてきます。

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