2024年3月7日

介護保険

介護保険料の引き下げを

第8期介護保険事業計画(3カ年計画)の最終年度にあたる2023年度の県内の平均保険料(基準額月額)は、5,732円で、第7期(2018~2020)より206円(3.7%)の引き上げであった。介護保険のスタート時(第1期・2000年2,737円)からは2倍超の増額となっており、物価高騰とあいまって高齢者にきびしい生活苦をもたらしている。特に今回の自治体キャラバンは、第9期事業計画(2024~2026)が準備されているタイミングであり、保険料の引き下げを求めた。
引き下げに活用できる財源として、次年度決算繰越金と介護給付費準備基金がある。2022年度末の繰越金と基金保有高の合計を事業計画の36カ月で除すと、幸田町以外の53市町村(98%)で月額500円以上、32市町村(59%)で月額1,000円以上、豊明市・美浜町・飛島村では月額2,000円以上の引き下げが可能なことが判った。
繰越金や基金残高が増えるのは保険料の設定が高すぎたことが原因である。2022年度末の基金残高を見ると前年度比で35市町村(65%)が増やしており、また多額な次年度繰越金を有している市町村もある。
安城市ではこの基金を取り崩して、第9期の介護保険料を引き下げる案が示されている。他の市町村でも、第9期事業計画にあたっては決算繰越金、および基金残高は全額取り崩し、保険料引き下げに取り組むことを求めたい。

進まない特養などの基盤整備

愛知県内の特別養護老人ホーム(以下「特養」)など介護保険施設の基盤整備は極めて深刻な状況である。
総務省がまとめた「統計でみる都道府県のすがた2023」によると、愛知県内の特養の施設数は65歳以上高齢者人口対比で全国最下位の47位となっている。
特養の要介護3以上の待機者数は、2015年17,277人から徐々に減少し、2023年調査では7,710人と半数以下となった。さらに特養の対象者には、要介護1・2でも要件に該当する場合は入所が認められる「特例入所」の方もいる。このため自治体には、要介護1・2の「特例入所」を希望する方も含めた待機者を把握することが求められる。しかし待機者の実態を把握するうえで重要な、要介護1・2の待機者を把握していない自治体が18市町村(33%)、要介護3以上さえ把握していない市町村が2町あり、実態はさらに多い。
一方、愛知県は3年に1度発表している待機者数に老人保健施設、サービス付高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホームなど一時的に入居しながら待機している人を除外するなどの仕掛けをして、見かけの数字を低く抑え、県内の要介護3以上の待機者を3,502人としている。市町村によっては、自治体キャラバンの調査に対しても主体的に独自調査をしないで、県の調査結果の数字をそのまま回答している所もある。
それでも回答を見る限り傾向として特養の待機者は減少しているが、一方で団塊の世代が75歳を超える2025年を経て2040年に向けこれから要介護者はさらに増え続け、家族介護力はいっそう低下することが予測されている。にもかかわらず、各市町村の特養の整備目標は極めて少なく、不充分な内容となっている。名古屋市の第9期事業計画案によると2024~2026年の3年間で150人の定員を増やすとしているが、前期計画の380人からみても半分以下の整備目標になってしまっている。

障害者控除のさらなる活用を

障害者手帳の所持に関わらず、要介護認定者を市町村長が税法上の障害者と認めれば障害者控除を受けることができる。実際、50市町村(93%)が要介護認定者または障害高齢者自立度A以上を税法上の障害者控除の対象としている。
新たに障害者控除の認定を受けた人の税と保険料の負担が13万6,000円(住民税7.4万円、所得税4.3万円、介護保険料1.9万円)軽減された例が生まれている。
すべての要介護認定者に障害者控除認定書を自動送付した春日井市・瀬戸市・尾張旭市は、自動送付後の障害者控除額実績が、春日井市約1億8,000万円、瀬戸市約9,000万円、尾張旭市約4,000万円へ増加したように、自動送付することで申請漏れの防止に役立っていることが裏付けられている。春日井市では新たに障害者控除を受けた人の市民税負担軽減額は、平均33,000円で、他に所得税と介護保険料が軽減されている。
「認定書発行枚数(県合計)」は、要望を始めた2002年当時3,768枚であったが、毎年増え続け、直近では2021年の71,995枚から2022年は76,178枚へと大幅に増加している。
「要介護1以上または障害高齢者自立度A以上を障害者控除の対象」としているのは、50市町村(93%)へと拡大し、未実施は4市村(名古屋市・蒲郡市・田原市・豊根村)のみとなった。特に、名古屋市は、93%の市町村が認めている「要介護認定者または高齢障害者自立度ランクA」を障害者控除の対象とせず、61%の市町村が実施している「認定書の自動送付」も行っていないため、要介護認定者に対する認定書の発行割合が県内最低水準(1.5%)の状況だ。
「対象者(要介護認定者等)に認定書を自動送付」は、新たに田原市(267枚→771枚)・清須市(240枚→1,973枚)・大治町(29枚→788枚)が実施し、33市町村(61%)に拡大している。
なお、瀬戸市は、2020年から県内で初めて「要介護者への認定書自動送付を中止」したため、2019年に5,277枚発行した認定書が、2020年1,272枚、2021年995枚、2022年857枚へと激減し、2021年の障害者控除額が2020年より約2,400万円も減少している。障害者控除を受けられる人の申請漏れが危惧される。直ちに認定書の自動送付の復活を求めたい。
障害者控除認定書発行の前進は、自治体キャラバンでの継続的な要請や地域住民の粘り強い働きかけ、自治体担当者の努力が生み出した貴重な成果だと言える。
未実施の市町村には、保険者が持つ要介護認定のデータをもとに、市町村長の判断により、「すべての要介護認定者」または「障害高齢者自立度A以上」を障害者控除の対象とし、自動的に認定書を個別送付するように求めたい。

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