2024年3月16日

任意予防接種、福祉医療制度、健診・検診

任意予防接種

おたふくかぜ
おたふくかぜワクチン助成は、新たに一宮市など8市町増え、30市町村(56%)となった。
おたふくかぜを巡っては、厚生労働省の予防接種・ワクチン分科会で定期接種化の検討が行われている。また、日本耳鼻咽喉科学会の調査では、2015・2016年の2年間で、少なくとも348人がおたふくかぜの合併症による難聴と診断されていることから、学会として定期接種化を求めている。
おたふくかぜワクチンは二回接種が望ましいとされており、助成回数を2回としているのは13市町村(24%)となった。
国に対してムンプス難聴やその後の後遺症を防ぐためにも早急に定期接種化することを求めることとあわせて、市町村に対しては国の定期接種化を待つことなく助成制度の創設・充実を求めていく必要がある。

子どものインフルエンザ
子どものインフルエンザワクチンの助成制度を実施している自治体は名古屋市とみよし市の2自治体増え21市町村(39%)。知多市・南知多町・設楽町・東栄町・豊根村では自己負担無料で実施している。助成対象については安城市や設楽町では18歳までの子どもを対象にしている一方、中学校3年生のみ(稲沢市、豊明市)、中学校3年生と高校3年生のみ(岡崎市、江南市、東海市、大府市、知多市、南知多町、幸田町)、小学校6年生と中学校3年生と高校3年生のみ(名古屋市)など範囲を限定している自治体もある。より広い対象での実施が望まれる。
子どもや障害者の健康を守り、学級閉鎖や看病のため仕事を休まざるを得ない親の負担を減らすためにも、すべての自治体でインフルエンザワクチンの助成制度があることが望ましい。

帯状疱疹
帯状疱疹ワクチンは、27市町村増え、34市町村(63%)へと一気に拡大した。帯状疱疹は加齢に伴い増加する傾向にあり、50歳を境に発症率が急激に上昇し、70歳以上での発生頻度は1,000人あたり10人以上となる。合併症や帯状疱疹後神経痛によって長期にわたって苦しむ患者が多いことからワクチンによる予防が重要である。帯状疱疹ワクチン助成については全国的にも急速に拡大していることから、愛知県でも助成制度創設を強く求めたい。
また、帯状疱疹ワクチンはビケン(生ワクチン)とシングリックス(不活化ワクチン)で価格差が大きい一方、ワクチンの種類にかかわらず助成額を3,000円~5,000円としている自治体がある。全ての接種希望者が費用の心配なくワクチンを接種するために助成額の拡充も求めたい。

麻しん
定期接種から漏れた人に対する麻しんワクチンついては、新たに助成を開始した市町村は無かった。助成制度を実施している自治体は5市町(9%)となった。
麻しんは、2018・2019年と連続して、未接種または1回接種の住民を中心に流行しており、流行を防ぐためにも緊急に助成制度の創設を求めたい。風しんは、国が定期接種の追加対策を実施しており、麻しんへの対応も求められる。
国に対して麻しんの定期接種化を求めるとともに、当面の緊急措置として自治体での助成制度創設を求めたい。

高齢者用肺炎球菌ワクチンの無料化
高齢者用肺炎球菌ワクチン助成事業は2014年10月に定期接種化された。対象者は65歳とされたが、経過措置として65歳以上で5歳刻み(上限100歳)の住民も対象となっている。国は接種率が低いことを理由に、経過措置を2023年度末まで延長した。また、日本感染症学会は「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第3版)」で、接種後5年以上の間隔を空けた再接種についても示している。
こうした国や学会の動きも受けて、全国の市町村で新たに助成を開始、または2回目の接種に助成をする変化が起こっている。県内では新たに津島市と飛島村が任意予防接種助成を開始し、飛島村は2回目の接種も対象とした。高齢者肺炎球菌ワクチンの定期接種は、対象者を拡大する経過措置が2023年度末で終了予定だが、経過措置の延長を国に求めるとともに、各自治体で独自に対象とするよう国に求めたい。
自治体では、「肺炎が生命に関わる持病の人もいる。早めに接種できるようにすることが、市民のためになる」と、28市町村(52%)が定期接種の対象から漏れた人に対する任意接種の助成事業を実施している。国の経過措置が終了した場合も、住民の生命を守る自治体の役割として任意接種の助成事業は継続すべきである。
また自己負担金があるため、接種したくても接種できない住民がいる。接種率の向上と住民の健康を守る立場から、自己負担額の軽減を求めたい。さらに定期接種の助成は一度に限られており、期間の経過に伴う抗体の低下により感染リスクは高まるため、2回目の接種も助成対象とすることを求めたい。
近年、ワクチンで防ぐことのできる疾患はワクチンで防ごうと各地で助成を求める声が広がり、小児用肺炎球菌ワクチンやヒブワクチン、ロタウイルスワクチンなどが定期接種化され、任意接種ワクチンを助成対象とする自治体も増加している。自治体キャラバンでは今後も任意接種ワクチンの助成を自治体に訴えていく。

記号はそれぞれ次の通り。
◎:自己負担無料で実施
○:助成を実施
―:任意での助成制度はなし 
※美浜町は育児用品助成事業の中で2万円限度に助成
2022年10月以降に変更されたものはゴチックで表記した

福祉医療制度

○妊産婦医療費助成制度を創設・拡充してください。

妊産婦医療費助成制度
妊娠中には様々な合併症を発症するリスクも高まることが知られており、日本産婦人科医会も妊産婦医療費助成制度の創設を要望している。
県内では東海市・東浦町・武豊町・設楽町に続き、2023年7月から美浜町が新たに実施し、5市町村(9%)の実施となった。設楽町では母子手帳交付月の初日から出産(流産を含む)翌月末までの期間を、全疾病を対象に助成を行っており、住民からも喜ばれている。全国では岩手県・栃木県・茨城県・富山県が県として助成制度を実施している。栃木県では、母子手帳の交付を受けた月の初日から出産(流産を含む)した月の翌月末日まで全疾病を対象に助成している。
妊産婦医療費助成制度については、国や県単位で行うことが重要である。しかし、妊産婦が安心して子どもを産み、育てられる環境の整備は喫緊の課題であることから、国や県での検討状況に関わらず各自治体で制度創設が求められる。

健診・検診

○産婦健診の助成対象回数を2回に拡充してください。

産婦健診の助成事業
産婦健診事業は2017年4月、産後うつの防止などを目的に国が創設した。
2019年4月からは県内すべての市町村で助成が実現した。また、助成回数を2回に設定しているのは、2022年10月から11市町拡大し、34市町村(63%)となった。
産婦健診を2回助成している自治体では、産婦健診の受診率が約80%で、そのうち産後うつの支援が必要と判定された受診者が約10%いるという結果も示されている。
2015~16年に妊娠中から産後1年未満の女性で死亡した357人のうち、自殺が102人で、その原因の一つに産後うつが考えられるとの報道もある。自治体では出産から子育てまで包括的に支援する子育て世代包括支援センターや産後ケア事業などの整備も進められており、様々なアプローチでの施策が重要であることは言うまでもない。産後のうつを早急に発見し、きめ細やかなフォローを行うために、今後も産婦健診の2回助成の実施を求めていく。

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