介護保険制度は3年に一度見直しを行うこととなっており、2024年はその見直しの年にあたる。各自治体が2024年度から2026年度まで(第9期)の介護保険事業計画を策定し、4月から運用されている。事業計画は、今後3年間の介護保険サービスの整備などを規定するほか、介護保険サービスの種類や利用者数の推計なども行い、自治体の保険料もこのなかで決められている。
14市町村が保険料引き下げ
協会地域医療部では、県内全市町村に対して、第九期介護保険料基準額(いわゆる平均保険料)および介護保険料段階数のアンケートを実施し、すべての市町村(2広域連合を含む)から回答を得た。
第8期から保険料を引き上げたのは34市町(県内自治体の63.0%)、据え置きは6市町(同11.1%)、引き下げは14市町村(同25.9%)だった(表1参照)。第7期から第8期では34市町が保険料を引き上げ、15市町村が据え置きしており、それと比較すると据え置きを行った自治体は若干減少したものの、全体として引き上げの傾向を脱することはできていない。また、引き下げをした自治体のうち8市町村は東三河広域連合が、広域連合内で保険料を引き下げたことに伴うものである。
自治体ごとの保険料額を見ると、前期に続いて名古屋市が6,950円と県内で最も高い。保険料の増減率では、前期比で29.5%引き上げた豊山町が最も高く、保険料も名古屋市に次いで6,864円となっている。豊山町は前期からの引き上げ金額も1,564円と県内で最も多くなっている。
豊山町は第6期に引き上げて以降、第8期まで保険料を据え置いてきたが、今回の大幅な引き上げの要因として「広報とよやま」2024年4月号では、余った保険料を積み立てていた基金が底をついたことや、介護給費が伸びたこととしている。
今回、引き下げをした自治体の特徴としては、介護保険の次年度繰越金や準備基金を取り崩して保険料引き下げに充てたことがあげられる。介護保険は、前期で集めた保険料が想定よりも高かった場合、準備基金が積み増されていく仕組みになっている。こうした場合には準備基金を取り崩して、次期の保険料引き下げに充てることで、被保険者に保険料を還元していくのが本来の保険料のあり方だ。この他、利用料を払うことが困難で利用を控える事例や、新しく施設を整備しても人材不足によって定数通りの受け入れができないという事態も散見されており、サービスの利用控えが保険料の引き下げの要因となっている可能性もある。保険があっても利用しづらい、介護保険の問題を浮き彫りにしている。
国基準を超えて多段階化進む
協会では、介護保険料段階を多段階化し、低所得者の保険料率を引き下げて、高額所得者の保険料率を引き上げることで応能負担を強めることを求めてきた。
第9期では前期より国基準の段階が9段階から13段階へと増加した。この国基準よりもさらに段階を増やしたのは45市町村(知多北部・東三河広域連合を含む)となっている。県内で最大となる20段階は高浜市。最少となる13段階は半田市、豊田市などの9市町(表2参照)。
所得段階のうち最も低い第1段階を、公費投入後の国基準(保険料基準額の0.285倍)より低く設定しているのは19市町村、第2段階(同0.485倍)は25市町村、第3段階(同0.685倍)は21市町村となっている(表3参照)。
国基準も含めて多段階化と低所得者への軽減が進んでいることは、協会の要望が一定実現したこととして評価できる。
介護保険は財政の基本的な問題として、国や自治体、被保険者の負担割合を固定しているため、支出が増えると被保険者の保険料も増えるという構造的な問題がある。協会では、今後もこの仕組みの見直しを国に求めていくとともに、市町村に対しては、独自の努力で保険料の引き下げや減免措置の拡充、多段階化による応能負担の強化などをさらに進めるよう求めていく。