2024年2月28日

国民健康保険

(1)保険料(税)の引き上げを行わず、払える保険料(税)に引き下げてください。
(2)保険料(税)の減免制度
①低所得世帯のための保険料(税)の減免制度を一般会計からの法定外繰入で実施・拡充してください。
②18歳までの子どもは、子育て支援の観点から均等割の対象とせず、当面、一般会計からの法定外繰入で減免制度を実施・拡充してください。
(3)資格証明書の発行は止めてください。
(4)被保険者に対する負担軽減
①70歳未満を含む七十四歳までの高額療養費の支給申請手続を簡素化し、申請は初回のみとしてください。
②所得の未申告世帯に対し、所得の簡易申告書送付など所得の申告勧奨を実施してください。

被用者保険と比べ高い国保料(税)
所得に占める保険料割合(2020年)は、国保10.0%、協会けんぽ7.5%、健保組合5.8%となっており、国保の負担の高さが際立っている。
例えば30代夫婦と小学生2人の4人世帯の保険料(2023年度)は、愛知県の協会けんぽが20万円に対し、名古屋市国保が39万円と2倍の差となっている。
国保の保険料が耐え難い負担となった最大の原因は、1984年に国保への国庫負担金を削減した制度改悪にある。改悪前の国保財政に占める国庫支出金割合は約5割だったが、2023年度は36.4%に減少している。そのため、同時期の平均保険料は3万9千円から9万1千円へと大幅に引き上がっている。
国保料(税)を 引き下げる道筋は
国保料(税)を引き下げるには、①国庫負担金の増額、②都道府県の独自補助の拡充、③市町村の一般会計からの法定外繰入の拡大、国保会計に積み立てられた基金・剰余金の活用、の3つの対応が想定される。
このうち、何よりも求められるのは、①国庫負担の増額である。全国知事会は、1兆円の公費投入で協会けんぽ並みの保険料(税)にすることが可能と訴えている。
②都道府県の独自補助の拡充については、愛知県は、かつて県独自に28億円の補助を実施していたが、2013年度限りで廃止した。少なくとも、医療費助成制度(福祉医療制度)の実施に伴う国庫負担金の減額分については県が応分の負担をすべきものである。
③市町村の国保会計に積み立てられた基金・剰余金の活用では、2022年度の基金・剰余金は、今回の自治体キャラバンアンケート結果によると、愛知県合計で、基金保有額が167億円(1人当たり1万2,765円)、剰余金(次年度繰越金)が120億円(1人当たり9,181円)、合計287億円(1人当たり2万1,945円)積み立てられている。市町村別に見ると、基金保有額と剰余金の1人当たり合計が5万円を超えるのが9市町村(17%)、3万円を超えるのが26市町村(48%)ある。
積み立てられた基金・剰余金は、保険料(税)の引き下げと減免制度の実施・拡充に優先的に活用するよう求めたい。
保険料(税)の 独自減免存続を
被用者保険よりも負担の大きい保険料(税)を少しでも軽減する上で、低所得世帯向けの保険料(税)減免制度や18歳までの子ども均等割の免除、収入減少を理由とした減免制度は、極めて有効な施策である。
国は「所得の多寡や被保険者の年齢などにより保険料を一律に軽減している場合」は、「計画的に削減・解消すべき赤字」とみなし、低所得世帯向け減免、子どもの均等割減免の法定外繰入を事実上認めない取扱いを示した。
こうした動きの中、これまで18歳未満・70歳以上・要介護者・障害者・低所得世帯など約3万6千人に優れた減免制度を実施していた一宮市は、2022年度をもって独自減免制度を廃止し、多くの世帯の保険料が大幅に引き上げられたことは衝撃である。
名古屋市も、「名古屋の国保と高齢者医療をよくする市民の会」が2024年1月に市保険年金課と懇談した際、「愛知県国保の運営方針が3月にまとまるが、県内の保険料統一をめざしており、そうなると、これまで制度として運営してきた市独自の保険料減免制度や独自控除は実施が難しい」と発言。市民の会からは「保険料統一にあたって、国は市町村の合意が重要としており、県に対して名古屋市として独自減免制度や独自控除を継続できないのは困ると、意見を主張すべき」と要望している。
市町村独自の保険料減免や法定外繰入を規制することに対し、全国知事会は「地方の実情に応じた取り組みを阻害するもの」である。国および愛知県は、市町村独自の「低所得世帯向け減免」、「子どもの均等割減免」などを「削減・解消すべき赤字」とみなさないよう求めたい。
資格証明書の発行は中止を
2023年6月1日現在の愛知県内の国保加入世帯946,629世帯のうち92,363世帯(9%)が保険料(税)を滞納し、短期保険証や資格証明書が発行される恐れがある。国は、コロナ感染症対策として資格証明書発行世帯に対して短期保険証を発行するか、資格証明書でも正規の保険証と見なして取り扱う措置を講じた。県内で資格証明書を発行している自治体は、2023年6月1日現在5市町村(9%)まで減少し、発行世帯も77世帯(2022年)から23世帯(2023年)と減少した。
こうした中、名古屋市が、2020年9月以降、資格証明書を発行しなくなったのは大きな成果である。名古屋市は、資格証明書を発行しなくなった理由を「資格証明書交付を目的化して滞納整理の進捗が見られない案件が散見されることや、他都市においても資格証明書によらない滞納整理に舵を切る事例が見られることを踏まえ、原則として全ての滞納世帯に短期保険証を交付する」と説明している。こうした経験を広げていくことが重要である。
ところが、コロナ感染症対策が5類に移行後、資格証明書の交付に踏み切る自治体が現れていることには監視が必要である。キャラバンの懇談の席上、それまで交付ゼロだった豊橋市では新たに40件も交付していることが判った。国は2023年10月以降も資格証明書交付世帯でも短期保険証交付を行うという特例を、2023年度末まで継続するとしている。コロナに関わらず全世帯に短期保険証を交付するという国の取り扱いの趣旨を市町村に周知することが重要となっている。
滞納者への差押え
差押え世帯数は、把握していない21市町村を除く33市町村の合計で、2021年度3,765世帯から2022年度3,704世帯とわずかに減少した。しかし、件数は、2021年度18,172件から2022年度19,961件に増加している。
70歳未満の高額療養費申請簡素化
厚労省は2021年3月、市町村判断で70歳未満も簡素化できるよう国保法施行規則の省令を改正した。これを受けて、70歳未満の高額療養費の支給申請を「簡素化」したのは、38市町村(70%)と、2022年の21市町村から大きく改善した。検討中も15市町村(28%)で、今後の改善が期待できる。
高額療養費申請簡素化は、市町村に毎月申請するという被保険者の負担軽減や、市町村の事務負担軽減、郵送費削減のメリットがある。
愛知県も2022年以来、「70歳未満の高額療養費支給申請手続の簡素化(手続を初回申請のみとするもの)を進める必要があると考えており、市町村に対して推進を通知している」との回答であり、全市町村での申請手続き簡素化を求めたい。

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