2018年6月7日

消費税損税問題-抜本解決へ正念場 会員署名に協力を

(愛知保険医新聞2018年6月5日号)

 日本人にとって当たり前の健康保険の皆保険制度は、アメリカでは導入されていない。皆保険を目指したオバマケアもトランプ大統領が誕生したことにより頓挫の憂き目に遭っている。そもそも、何故アメリカ人にとって皆保険制度がすんなりと導入されないのであろうか。それは皆保険制度が統制経済で成り立ち、それが社会主義的だということで、アレルギーのあるアメリカ人には受け入れがたいものになっている。
 日本ではその統制経済である皆保険が導入されているが、それは医療機関側の犠牲で成り立っている。診療報酬は国で決められているが、その医療に必要な材料、器具、機器は自由経済で成り立っており、保険点数には関係なく業者の都合で勝手に値上がりしたりしている。そして、本来は最終消費者が払うべきはずの消費税も控除対象外消費税と呼ばれ医療機関側が負担することになる。
 実際、今年3月に保団連が取り組んだ医科歯科の診療所を対象とした消費税負担額概算調査の中間報告では、医科診療所(有床・無床)、歯科診療所それぞれで、保険診療収入に対して2%を超える損税負担が発生していることが報告されている。厚労省は、医療機関の控除対象外消費税対応として、1989年0.76%、1997年0.77%、2014年1.36%診療報酬に上乗せしたとしているが、十分な金額になっているだろうか。消費税補填分を上乗せした診療項目が、過去の改定で算定要件が変更されたり、引き下げや項目ごと削除され、もはやその実態は検証不能となっている。
 また、大病院など設備投資が多い医療機関では、診療報酬の補填分では補填しきれず大きな損税が発生している。事実、当会が県内の自治体病院に対して控除対象外消費税の実態調査を行ったところ、回答のあった21病院で2016年度の損税額は約530万円~6億9500万円、単純平均で約1億9200万円に上ることが分かった。
 中医協の「医療機関等における消費税負担に関する分科会」では、来年10月に予定されている消費税10%への引き上げを見据え、議論を始めている。しかし、2018年度与党「税制改正大綱」には、医療に係る消費税のあり方については、「平成31年度税制改正に際し、税制上の抜本的な解決に向けて総合的に検討し、結論を得る」としている。今まさに、医療を免税取引として、「ゼロ税率」を適用して損税解消を訴えていく正念場を迎えている。今取り組んでいる免税「ゼロ税率」適用、再増税中止の医師・歯科医師署名に一人でも多くの会員の協力をお願いしたい。

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