10月から、75歳以上の医療費窓口負担2割化が実施された。実施中止を求める全国83万筆余りの署名の声を聞かない負担増に強く抗議したい。
高齢者の多くは、年金だけで生活する中、年金給付額の引き下げ、物価高と並ぶ窓口負担増の三重苦で、受診抑制による発見の遅れや重症化など、命に関わる問題が懸念される。
患者さんからは「年金が少ないため、まだ働きながら主人の介護をしています。糖尿とてんかんがあり薬代は非常に高額です。どうか1割のままでお願いいたします(73歳)」「60歳の今でも収入は少なく年金も受け取れず、3割負担が厳しい。ましてや75歳以上で200万円以上は2割負担となると生活も受診もできない。人一人が生活していくのにどれだけのお金が必要かわかってほしい」などの悲痛な声が寄せられている。医療機関からも「経済的な理由で受診回数を減らしたり、痛くて苦しくても通院を我慢する患者さんがいて、助かるはずの命を落とす方が、ここ3年間で5例ほどあった。そこに高齢者の2割負担は明らかにこのような例を増やすと感じる。患者さんからは『年寄りは早く死ねということか』『老人いじめだ』との声がある」などの声が寄せられている。
「配慮措置」として、外来での窓口負担増加額は3000円が上限となる。しかし、他医療機関との通算で月額3000円を超えた場合は、後日、超過金額が患者の高額療養費の口座へ振り込まれる。口座が未登録の場合は、後期高齢者医療広域連合や市町村への申請が必要で、混乱が予想される。また、入院にはこのような配慮措置もない。
今からでも、法改正が必要なく予算措置で実質的な負担増を食い止める方法もある。かつて70歳から74歳の2割化を食い止めた「指定公費負担医療制度」の実績があり、野党議員が実施を求めたが、政府はこれにも応じようとしなかった。
先月、愛知県社会保障推進協議会が愛知県と懇談した際に、担当者は「国民健康保険制度は、そもそも相互扶助により運営される制度」と発言した。国の通知にそのように記載しているからというのが理由だが、そもそも国民健康保険法第1条は社会保障の制度としての国保であることを明記しており、相互扶助というのは、戦前の国保法にあった考え方だ。誰もが安心して医療を受けられるよう、窓口負担2割化は今からでも中止すべきだ。
2022年10月7日