医科診療報酬改定情報(1)

中医協で個別項目の議論もスタート

 診療報酬の改定は、改定率が内閣で決定され、基本方針が社会保障審議会で、具体的な改定内容は中医協で議論され決定される。中医協総会では2022年4月の改定に向けた議論が進んでいるが、コロナ禍でもあり、次期改定の論点を議論する第一ラウンドが始まったのは、前回より3カ月遅い7月からとなった。主な検討項目は、コロナ・感染症対応、外来、入院、在宅、歯科、調剤の他、個別事項として不妊治療の保険適用、医薬品の適切な使用の推進、歯科貴金属改定の十項目。
 9月以降の第二ラウンドでは、意見や論点の整理をもとに他の個別項目も含め議論が進められ、来年1月以降に諮問・答申等が予定されている。

かかりつけ医機能の評価、オンライン診療など焦点に
 「コロナ・感染症対応」については、診療報酬上の特例措置に係る議論が行われ、9月末までの「感染症対策実施加算」の延長や恒久的な評価を求める意見が診療側委員から出された。しかし、支払側は「エビデンスがない」として恒久化には強く反対する姿勢を示した。加算については、九月に厚労省が延長を求めて折衝したが、財務省の打ち切りの主張に押し切られ、周知のとおり延長は行われず、10月以降は補助金での支援となっている。
 「外来」では、かかりつけ医機能の評価や医療機関の連携に係る評価、外来機能の分化の推進、オンライン診療の評価などについて、議題と論点が示された。
 かかりつけ医機能について、診療側はより充実した評価を求めたが、かかりつけ医の制度化には反対しフリーアクセスの担保を求めた。一方、支払側からは一般的な受診はまずかかりつけ医からという受療行動の徹底が必要であり、地域包括診療料や小児科かかりつけ診療料などの点数が普及していないとして、抜本的な再構築を求める意見が出された。
また、国が初診からの実施を恒久化する方針を示し、診療報酬上の取り扱いの検討が課題とされているオンライン診療については、診療側が「対面診療が原則でオンラインは補完」と主張したのに対し、支払側は「相互補完も必要」としており、意見が相違している。

届出や算定状況をもとに、在宅・入院の在り方も議論
 「在宅」では、在宅支援診療所や継続診療加算の届出状況から、「24時間の往診担当医の確保」や「24時間の連絡・往診体制構築に向けて協力医療機関の確保」などの基準がネックであることが報告され、連携・チームによる在宅医療提供の評価のあり方が課題となっている。
 「入院」では、急性期医療について救急医療や手術等の実績、高度急性期医療との連携も含めた評価方法が議論されている他、回復期リハビリテーション入院料のアウトカム評価の強化、地域包括ケア病棟や療養病床では、求められる基準や実績、ペナルティの強化などの議論が予想される。
 診療側は、「コロナ禍の医療現場の影響を鑑みて大きな見直しは避けるべき」と主張しているが、支払側は「医療提供体制改革は急務の課題。次回改定で地域医療構想を後押しする内容とすべき」と求めるなど、次期改定の位置付けでは大きな隔たりがある。

医薬品適正使用や不妊治療の保険適用の課題も
 その他、「医薬品の適正使用」については、長期処方と残薬調整、ポリファーマシー、フォーミュラリ(医学的妥当性や経済性等を踏まえて作成された医薬品の使用方針)による後発医薬品使用の推進、ビタミン・うがい薬・湿布薬など保険給付範囲なども議論されている。財政上の理由でなく、必要な医薬品の保険給付を主張する診療側委員と、後発医薬品使用が進まないのは医師の責任と言わんばかりの発言を行う支払側の委員の間で、激しいやりとりもされている。
 「不妊治療の保険適用」については、ガイドライン等に基づいた保険適用範囲などが検討されるが、治療法や費用負担に幅がある不妊治療を、どう標準化し適正な診療報酬に設定していくのかが課題である。また、現在の特定不妊治療助成制度の廃止による患者負担増も危惧されており、政府の動きも含め、今後の改定議論を注視する必要がある。
(つづく)

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