2020年度個別指導における主な指摘事項(医科)1

 2020年度に愛知県で実施された個別指導において指摘された主な事項を抜粋して掲載する。診療録の記載や保険請求の算定ルールなど、日常診療の留意点として確認されたい。

【診療録等】
・医師による日々の診療内容の記載が不十分(極めて乏しい)。診療録は診療の都度、遅滞なく必要事項(特に症状、所見、治療計画等)の記載を十分に行う。
・診療録第2面に算定項目の記載がない。
・診療録第3面の日々の合計点数が記載されていない。
・電子的に保存している請求に係る記録に関して、誤入力で修正した際の履歴(追記日時)が表示されない。
・電子的に保存している記録の管理・運用について、1.「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第5版(第5.1版)」に準拠していない(特定のIDやパスワードを複数の職員が使用している)、2.電子カルテシステムの運用に関して診療録の一部(第1面及び3面)が紙媒体で運用され、患者情報の全ての所在が日常的に管理できない恐れがある。
・紙媒体の記録について、1.記載内容が判読できない、2.時系列での記載になっていない、3.鉛筆で記載されている、4.修正テープが使用され、修正前の記載内容が判読できない、5.診療に関するものでない事項を余白や枠外に記載している、6.処方内容を付箋紙に記載している。
・診療録と診療報酬明細書の記載が異なる(主傷病名、診療情報提供料の算定日)。

【傷病名】
・傷病名の記載又は入力について、1.診療録と診療報酬明細書の傷病名記載が一致しない、2.傷病名が一部漏れている、3.傷病名の転帰の記載がないまま傷病名が消えている、4.主傷病名と副傷病名を区別していない。
・医学的な診断根拠がない傷病名(検査、投薬に対するレセプト病名)を記載している。
・「疑い」病名であるにもかかわらず、確定傷病名として記載している。
・急性、慢性の記載がない(心不全、膀胱炎、肝障害、腎障害など)。
・左右の別の記載がない(変形性膝関節症、肩関節周囲炎、下肢静脈瘤、上肢湿疹、頸動脈硬化症、乳癌、腎腫瘍、加齢黄斑変性症、結膜炎、外耳道癌など)。
・部位の記載がない(動脈硬化症、末梢神経障害、変形性関節症、慢性疼痛、帯状疱疹、爪白癬など)。
・具体的でない(めまい症、嘔吐症、肝機能障害、不整脈、腸炎、胃炎など)。
・傷病名を適切に整理していない。1.傷病名が多数となっている(慢性胃炎と胃潰瘍など)、2.長期にわたる疑い病名(糖尿病の疑い、大腸癌の疑いなど)、長期にわたる傷病名(胃潰瘍、腰痛症など)、3.重複又は類似の傷病名(高脂血症と高コレステロール血症、C型肝炎と肝機能障害、変形性膝関節炎と右膝関節炎など)。

【初・再診料】
・時間外加算を、常態として診療応需の体制をとっている時間に算定している。
・夜間・早朝等加算について、受付時間を診療録に記載するなどにより管理を行っていない。
・再診料及び外来管理加算を、療養費同意書又は訪問看護指示書を交付した日に誤って算定している。
・外来管理加算の患者からの聴取事項や診察所見の要点に関する診療録への記載がない、不十分。
・特養ホームの配置医師とみなされるにもかかわらず、再診料を誤って算定している。

【医学管理等】
・特定疾患療養管理料について、1.治療計画に基づく服薬、運動、栄養等といった療養上の管理内容の要点に関する診療録記載が不十分、2.主病でない疾患に対して算定している、3.療養費同意書又は訪問看護指示書を交付した日に誤って算定している。
・特定薬剤治療管理料について、薬剤の血中濃度、治療計画の要点の診療録記載が不十分。
・悪性腫瘍特異物質治療管理料について、1.腫瘍マーカー検査の結果及び治療計画の要点の診療録記載が不十分、2.確定診断していない患者に対して算定している。
・難病外来指導管理料、耳鼻咽喉科特定疾患指導管理料について、診療計画及び診療内容の要点に関する診療録への記載がない。
・診療情報提供料(Ⅰ)について、1.交付した文書が別紙様式に準じていない、2.項目欄が一部ない。
・電子的診療情報評価料について、電子的方法により閲覧又は受信した検査結果や画像の評価の要点を診療録に記載していない。
・薬剤情報提供料について、1.薬剤情報を提供した旨を診療録に記載していない、2.当該処方に係る全ての薬剤の情報を文書により提供していない。
・療養費同意書交付料を、療養の給付を行うことが困難と認められない患者に対して誤って算定している。
(つづく)

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