健保だより(2020年2月15日号)

民法改正、医療法改正、応招義務通知

1.改正民法の実施にあたっての留意事項
2017年5月に成立した改正民法が2020年4月から施行されます。医療機関の業務に関係する部分をお知らせします。
(1)消滅時効の延長(民法166条関係)
従来「医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権は3年間行使しないときは、消滅する。」(現行170条第1項)と定められていましたが、業種ごとに異なる短期の時効が統一されたことにより、「5年」に変更されました。
(2)個人根保証契約に係る極度額の設定義務化(民法465条の2関係)
1)個人根保証契約の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負うこととされました。
2)個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じないこととされました。
【医療機関への影響】
医療機関への入院に際して、患者の親族等に保証契約を求めることがあります。この場合、入院費用等について包括的に保証を求めた場合、個人根保証契約に該当する場合があるので、極度額の明記など保証契約書の改訂等の対応が必要になります。
2.診療放射線の安全管理に係る体制整備について(医療法)
改正医療法施行規則が2020年4月から施行されます。診療放射線の安全管理について医療機関で取り組む事柄の概要を紹介します。
(1)診療用放射線の安全管理責任者の配置
安全管理責任者は、診療用放射線の安全管理について知識と経験を有する医師、歯科医師又は放射線技師とする。
(2)診療用放射線の安全管理のため下記の事項を定めた指針の策定
・診療用放射線の安全管理に関する基本的考え方
・診療用放射線に係る安全管理のための従事者に対する研修に関する基本方針
・診療用放射線の安全管理に係る安全の確保を目的とした改善のための方策に関する基本方針
・放射線の過剰被ばくその他放射線診療に関する事例発生時の対応に関する基本指針
・医療従事者と患者との間の情報の共有に関する基本方針(患者等に対する当該指針の閲覧に関する基本方針を含む)
(3)放射線従事者等に対する安全管理のための職員研修の実施
・放射線診療を行う医師、歯科医師、放射線技術者等を対象とした職員研修を年1回実施し研修内容を記録する。
(4)特定の診療用放射線機器に係る線量管理及び記録
CT、血管造影用透視用X線装置、診療用放射性同位元素、PET用放射性同位元素を用いた診療にあたっては学会等の策定したガイドライン等を参考に線量管理を行い記録を整備する。これら以外の放射線診療機器についても必要に応じて医療被曝の線量管理及び記録を行う。
※保団連発行「医療安全管理対策の基礎知識2019年版」を参照されたい。
3.医師法で定める応召義務への適切な対応の在り方について
2019年12月25日付で厚労省医政局長から「応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」が通知されたので概要を紹介します。
基本的考え方
1)医師法又は歯科医師法が定める応召義務は医師又は歯科医師が国に対して負担する公法上の義務であり、医師又は歯科医師の患者に対する私法上の義務ではない。
なお、医療機関が医師又は歯科医師を雇用し患者からの診療の求めに対応する場合については、医師法又は歯科医師法の応召義務とは別に、診療の求めに応じて必要にして十分な治療を与えることが求められる。
2)勤務医が労働契約・労使協定を超えた診療指示に対して、労働基準法等に違反することを理由に医療機関に対して労務提供を拒否しても応召義務違反にはあたらない。
3)医療機関として患者を診療しないことが正当化されるか否か、また医師・歯科医師個人がどのような場合に患者を診療しないことが応召義務に反するか否かについて最も重要な考慮要素は病状の深刻度である。
この他、医療機関の機能分化・連携や高度化・専門化、勤務医の勤務環境への配慮の観点から次の事項も重要な考慮要素である。
・診療を求められたのが診療時間(勤務時間)内であるか否か
・患者と医療機関、医師・歯科医師の信頼関係
【患者を診療しないことが正当化される事例の整理】については下記を参照されたい。https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000581246.pdf

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