2024年診療報酬改定に向けて、財務省財政制度審議会は11月20日、年末の予算編成に向けて「診療所の極めて良好な直近の経営状況等を踏まえ、診療所の報酬単価を5.5%程度引き下げ」「診療報酬本体をマイナス改定」とする建議を財務相に提出した。
社会保障審議会医療保険部会では、11月29日に「2024年度診療報酬改定に向けた基本方針」の骨子案が大筋了承され、中医協では医療経済実態調査の結果が報告されるなど、改定率の決定に向け重要な時期を迎えている。以下に中医協で検討されている内容のうち、外来に係る内容について報告する。
後発医薬品の特例措置やリフィル処方箋をめぐり診療側・支払側で対立
11月22日の中医協総会は後発医薬品、バイオ後続品、リフィル処方箋について議論した。
後発医薬品については、今年の4月~12月まで、医薬品の供給不安定を踏まえ、一般名処方加算や外来後発医薬品使用体制加算等へ上乗せする特例措置が講じられている。この措置の来年1月以降の取扱いについて、診療側は後発医薬品の供給不安定はさらに悪化しているとして、特例措置の延長を求めた。しかし支払側委員からは、「特例措置は当面の対応でやむを得ず了解した。納得できる合理的な理由が示されない限り延長には賛同できない」と対立した。
リフィル処方箋については算定が低調な中、さらなる活用に向けた患者への周知等が厚労省から提起されたが、診療側は「患者の症状や経過観察の必要性などを踏まえ、長期処方の可否も含め処方は医師の判断による。医師の判断が阻害されないよう十分留意する必要がある」と述べたのに対し、支払側委員は、「かかりつけ医に関する診療報酬で患者の希望に応じたリフィル処方箋の発行の評価も考えられる。特定疾患処方管理加算について、より長期の処方を評価することも検討すべき」と提案した。
長期収載医薬品の薬剤一部負担などでも意見の相違
11月24日の中医協には、厚労省から「医療経済実態調査」の結果が報告された。一般診療所全体の2022年度の医業・介護の損益状況は、個人・医療法人ともに2021年度と比べて黒字が拡大。一般病院全体では赤字幅が拡大し、2023年度の速報値では赤字幅が更に拡大する見込みであることが報告された。コロナ禍での比較である点や、最近の物価高騰や社会全体の賃上げ傾向から取り残されている医療機関の実情は反映されていない点に留意する必要がある。
また総会では、厚労省から長期収載品の薬剤の保険給付の在り方について提起があった。患者の一部負担額に最大限留意した上で、選定療養を活用することは診療側・支払側で一致したが、選定療養の対象とすべき長期収載品は、診療側から処方権はあくまでも医師にあり、「医師が必要と判断し長期収載品を処方した場合は、選定療養の対象外とすべき」との主張がされた。
一方支払側委員は、医療機関が後発医薬品を指定せず先発医薬品を処方する理由として、「患者希望」が最多であったことなどから、「医師が不要と判断した処方全てを選定療養から除外する考えには疑問がある」と判断の妥当性に疑義を呈した。これに対し診療側委員からは「同じ薬効の薬剤でも、処方後の患者の様態は異なる場合は少なくない」と指摘。単に「患者希望」に基づき長期収載品の指定を実施している訳ではないとの実態が強調された。
その他では、個別事項として緩和ケア(医療機関の連携体制、在宅における非がんの緩和ケア、小児の緩和ケアなど)に係る評価の在り方について議論がされた。診療側・支払側ともに「緩和ケアの体制強化」という方針では一致したものの、「実施できるような診療報酬上の評価が必要」と強調した診療側に対し、支払側は、要件上の厳格化で体制強化を図るべきとの認識を示した。
実態調査に対する見解も分かれる
11月29日の中医協では、認知症について議論がされた。「かかりつけ医による認知症対応」として地域包括診療料・加算の施設基準に、診断後支援やBPSD(行動・心理症状)への対応、医療・介護に関する施策・制度、人生の最終段階における医療・ケアの研修受講を要件とすること等が提案された。診療側は「要件設定と実態や役割が乖離し、要件化はむしろ視野を狭める」と反対したが、支払側は要件化に賛同し、意見が分かれた。
12月1日の中医協には診療側・支払側双方から、医療経済実態調査の結果に対する見解が示された。診療側からは、コロナ禍の診療報酬特例や補助金を除いた議論が前提となること、賃上げや人材確保、物価高騰に対応するには、十分な原資が必要であるとの見解が示された。支払側は、病院・診療所の経営は総じて堅調であり、コロナ補助金を含めた収支で判断が妥当との見解を主張した。