異次元の少子化対策とコロナ禍で感じたこと

愛知保険医新聞2023年3月25日号掲載

緑区 長田 芳幸

私の病院でもこの三年の新型コロナウイルス感染の流行に伴い、多数の職員の感染を経験しました。どこの施設でも同様とは思いますが、病棟内での感染だけではなく家庭内感染も問題になりました。
体験したスタッフからその時の話を聞くことがありました。印象に残った話として、家庭内感染で家族中が感染を起こした時には当然家族全員が自宅療養となるわけですが、家事は妻が行い夫は行わない家庭が未だにあるということを聞きました。もちろん夫と協力して家事を分担している家庭もあるようですが、日本においてはまだ必ずしもそうではない家庭が多いようです。更にひどい話になりますが、女性のほうが早く療養期間が過ぎて仕事にでた場合に、家庭によっては妻が帰ってきても、夫と子どもは何もせず家で待っており夕食の準備や洗濯など何もできない(?)ため、その後に家事をするという家庭もあるということも聞きました。
また、保育園や幼稚園でコロナが流行して休園になった時も、妻である看護師さんが休んで子どもをみて、夫は出勤するということがよくありました。そのため、病院もスタッフの確保等でかなり大変な思いをすることとなりました。
私は決して、その家の夫婦関係がおかしいとは思いません。日本の社会構造や教育に問題があるのではないかと感じています。
現在、与党である自民党は異次元の少子化対策と打ち出しながら、旧来(戦前?)の家族観に回帰しようとする動きが一部あると報道等で目にすることがあります。女性が働くことが当たり前になりつつある時代に、そのような家族の在り方が果たして両立しうるのか、国際社会に日本が向きあっていけるのか、子どもを育てたいと思えるのか疑問に感じてしまいます。

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