2019年6月26日

リニア中央新幹線-本当に必要なのか-建設中止の英断を

(愛知保険医新聞2019年6月25日号)

リニア中央新幹線は、JR東海の単独事業として認可され、2015年12月に本線工事を着工、2027年の品川―名古屋間の開業をめざしている。認可に至るまで、またその建設に至る過程で、自然環境破壊の懸念、環境影響評価の不備や、JR東海の住民軽視の強引な進め方など、さまざまな問題が指摘されてきた。それが解決せぬまま工事を進めるJR東海に対し、沿線各地の住民はネットワークをつくり、建設差し止めを提訴した。現在東京地裁で審理中である。
着工以来、工事を巡る事故・トラブルが続出している。2017年末、南アルプストンネル長野工区の大鹿村の隣、中川村で、残土搬出のための道路工事で土砂崩れを起こし、住民の生活道路が長期間にわたり不通になった。2018年暮れから、名古屋市名城非常口工事現場で異常出水があり、工事が中断している。今年になり、中津川市でトンネル地上部の陥没事故がおきた。瑞浪市の日吉トンネル工区の残土から、基準値を超えるフッ素、ヒ素が検出され、その産業廃棄物としての処理を免れるために、海洋埋立土として投棄するのではと危惧されている。また、静岡県富士市では、桜エビの不漁原因に、富士川上流の早川非常口工事の排水が影響しているのではと調査が行われた等々である。
リニア中央新幹線は工事前から、多々公害の発生が懸念・指摘されてきた。膨大な発生土の処理問題、水涸れなどである。発生土処分については、JR東海はあいまいにしたままである。大鹿村や松川町、南木曽町で、処分地を巡るトラブルが続いている。受け入れを決めた置き場に、大量の土砂が運び込まれる危険がある。重金属類やウランの汚染土が名古屋港内や伊勢湾の海面埋立として投棄される可能性も高い。大井川上流の水涸れ問題では、静岡県住民がJR東海の説明に納得できず、静岡工区は着工に至っていない。JR東海から2027年開業が難しくなっているとの発言も聞かれるようになった。
数々の問題をかかえ、国も3兆円の融資をするこの事業、建設費の膨張は必至である。在来新幹線が時速350㎞営業運転も視野に入っている現在、赤字必至の品川―名古屋40分が、本当に必要なのだろうか。これ以上の浪費と環境破壊を食い止めるため、JR東海は英断を持ってリニア中央新幹線の建設を中止すべきである。

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