2018年2月8日

診療報酬改定-医療・社会保障の削減から転換を

(愛知保険医新聞2018年2月5日号)

診療報酬改定率は、昨年12月18日の厚労大臣と財務大臣との折衝で、実質マイナス1.24%と決まった。1月12日には厚労大臣から中医協への諮問が行われ、公聴会やパブコメ募集、個別改定項目(短冊)の提案がされるなど、4月診療報酬改定の内容が固まってきている。中医協の答申が間近に予定され、具体的な点数も明らかとなる。
今回の改定は、政府が決めた「骨太方針2015」に基づいて、社会保障費の伸びを年間5,000億円に抑えるという既定路線に沿ったものであり、安倍政権のもとで、実質マイナス改定は3回連続となった。協会・保団連をはじめ医療関係団体の運動もあり、当初財務省側が主張していた2%半ばのマイナス改定は避けられたが、薬価改定の引き下げ財源が技術料本体の改定には充当されず、本体部分の引き上げもごくわずかであり、医療の質の向上や医療機関の経営の改善につながる十分な財源が確保されたとは到底言えない。
改定の議論は、社会保障審議会医療保険部会・医療部会でまとめた「平成30年度診療報酬改定の基本方針」に則して行われているが、基本方針には医療機能の分化・強化や効率化・適正化、医療実績やアウトカム評価の推進など、医療機関にさらなる負担を求める文言が並んだ。中医協では、医療経済実態調査で厳しい医療機関の実態が示されたにもかかわらず、パブコメ募集の際に出された「現時点の骨子」には、初・再診料や入院基本料など全体の底上げにつながる項目は挙げられていない。
一方で、入院から在宅への流れを一層強める方向で、入院医療の評価体系の再編・統合とともに一般病床や回復期、療養病床での在宅復帰に係る指標の見直しや、より重症な在宅患者への対応策として、医療・介護の連携強化、ターミナルケアや看取りの評価の充実などが盛り込まれている。また、要介護被保険者に対する維持期リハビリテーションの経過措置を1年後に廃止するなど、医療から介護への流れを強める提案もされている。
これらは、患者・国民のニーズや医療現場からの声に応えたものではなく、医療費抑制のための強引な誘導策であり、「医療崩壊」をさらに深刻化させるものである。医療・社会保障の削減路線ではなく、医療の質を高める診療報酬の引き上げこそが求められている。

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