(愛知保険医新聞2018年3月5日号)
東日本大震災・福島第一原発事故から丸7年になろうとしている。これは、未曾有の自然災害と、あってはならない人為災害「原発事故」の複合災害であったが、これをきっかけに、多くの国民は原発に依存しない道を考え始めた。現在も、原発ゼロを望む声は各種世論調査で過半数を超える。
その世論を反映したと思われる動きが昨今見られる。昨年12月に広島高裁が、四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを命じる判決をした。阿蘇山噴火の影響を過小評価しており、原発の立地は不適という理由だった。また、3月と10月に、国と東京電力に損害賠償を求めた住民訴訟で、いずれも原告が勝利し、福島第一原発事故の責任を国と東京電力に認めた。
世界的に原発は安全対策のコストが膨らみ、採算が悪化している。関西電力は大飯原発1・2号機の廃炉を決定した。100万KW超の原子炉廃炉決定は初めてで、安全対策に費用がかかるという理由だった。また、日立の子会社の英国での原発建設計画に、日本政府が1兆円以上の保証をして支援するという話も、裏を返せば原発新増設の困難さ、リスクの深刻さを示している。
しかし、原発推進の動きは根強い。政府は依然として原発依存政策を、あてどもなく続けている。次期エネルギー基本計画でも原発を「重要なベースロード電源」と位置づける姿勢を変えようとしていない。また、高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉が決定され、六ヶ所村の再処理工場の稼働が見通せないなど、破綻が明らかな核燃料サイクルに固執している。原子力規制委員会は、福島第一原発事故の収束を待たず、事故当事者である東京電力柏崎刈羽原発6・7号機の新規制基準「適合」の審査書を決定した。
このような情況の中、今年1月、小泉元首相も加わる「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」(原自連)が、「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」を発表し、各政党に呼びかけた。野党も「原発ゼロ」に足並みをそろえつつある。これらが、政府のエネルギー政策転換のための力になることを期待したい。
私たちは、7年目の「3・11」を迎えるにあたり、国民の命と健康を守る医師として、原発事故避難者の支援を今後も続けていくとともに、原発ゼロの日本をつくる決意を、あらためて表明する。